宮沢賢治『銀河鉄道の夜』あらすじ考察「ほんとうのさいわい」の意味 未完の理由とは?

銀河鉄道の夜 散文のわだち
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宮沢賢治の小説『銀河鉄道の夜』は、彼の代表作でありながら、完成しなかった小説としても有名です。

アニメーションや楽曲など、本作にインスパイアされた作品が多く存在し、今もなお多くの人に愛され続けています。

本作のキーワードとなる「ほんとうのさいわい」に注目しながら、考察していきます。

『銀河鉄道の夜』の作品概要

作者宮沢賢治
発表時期初稿:1934年(昭和9年)
ジャンル中編小説、童話作品
テーマ本当の幸、
他人のために生きる

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『銀河鉄道の夜』あらすじ

あらすじ

父親が行方不明、母親が病気のため、ジョパンニ少年は朝と夕方に辛い仕事をしています。そのため学校では元気がなく、親友のカンパネルラとも殆ど口をきかなくなっています。クラスメイトはジョパンニ少年のことを馬鹿にして揶揄いますが、カンパネルラだけはいつも気の毒そうに口をつぐんでいるのでした。

銀河のお祭りの日、ジョパンニ少年が川辺でお祭りの様子を見ていると、いつものように同級生の集団に揶揄われます。無論カンパネルラは申し訳ない顔をしています。堪らず逃げ出したジョパンニ少年は、丘の頂上まで来て、独りで寝転びます。すると、知らないうちに彼は銀河鉄道の車内に居ました。前の席にはカンパネルラも座っています。

2人は銀河鉄道の旅の中で、鳥を取る人や、タイタニックの乗客だった子供たちなど、沢山の人と出会い交流します。彼らとの出会いによって、2人は「ほんとうのさいわい」とは何なのかを考えるようになります。

「みんなの幸のために体が燃えても構わない」と話すジョパンニ少年は、「『ほんとうのさいわい』を探すために、どこまでも行こう」とカンパネルラに語りかけます。しかし、振り返るとカンパネルラは車内からいなくなっていました。

途方に暮れて泣き出したジョパンニ少年は、気がつくと元の丘にいました。走って丘を下ると、川辺に人だかりができていました。なんとカンパネルラが同級生を助けて川に流されたのです。もうだめだと諦めたカンパネルラの父親から、ジョパンニ少年の父親が今日あたり帰って来るらしいという情報を知らされます。いろんなことで胸がいっぱいになったジョパンニ少年は、母親がいる家へ必死に走っていくのでした。




『銀河鉄道の夜』の個人的考察

個人的考察

未完のままの理由

本作『銀河鉄道の夜』は宮沢賢治の代表作でありながら、完成しなかった小説としても有名です。

未完の理由は、宮沢賢治が生前に改編を繰り返し続けたからです。

1924年頃の初稿から、晩年の1931年頃まで推敲が繰り返されました。そして彼の死後に、下書き原稿の状態のまま出版されたのが、我々の知る物語なのです。

いわば、生前に完成しなかった途中の原稿を、勝手に出版したわけです。

そもそも完成形が存在しないため、発表後も研究者たちによって改稿が繰り返され、その都度物語は変化しています。第1稿から第4稿の間に、追加された内容、削除された設定が多く存在するのです。

しかし、文中に登場する「ほんとうのさいわい」という言葉が、一貫した物語のメインテーマであることは間違いありません。そのあたりに注目しながら考察していこうと思います。

「ほんとうのさいわい」とは何か?

作中にジョパンニが「ほんとうのさいわい」と何度も口にします。終盤では、「ほんとうのさいわい」を探すために、どこまでも一緒に行こうとカンパネルラに語りかけます。

おそらく、宮沢賢治が訴えていた「ほんとうのさいわい」とは、自分を犠牲にしてでも他人に尽くす行為を意味します。

ジョパンニはその真意を、銀河鉄道の中で出会う人々から学びました。

まずジョパンニは、必要以上に話しかけてくる「鳥取り」に対して、軽薄な態度を取ってしまいます。しかし、無愛想な態度をとってすぐに、ジョパンニは「鳥取り」に対して気の毒な気持ちになります。とは言え、同情をおもむろに表に出すのもきまりが悪くて、気持ちを上手く言葉にすることができません。

そうこうしているうちに「鳥取り」はいなくなってしまいました。ジョパンニは、会話を避けたことや、内心では邪魔だと思っていたことを酷く後悔します。

要するに、ジョパンニは「他人が望むことをしてあげたい」という気持ちがあるのに、それを上手く言葉や行動で示せない自分にもどかしさを感じているのです。

ただ、この段階では今までに感じたことのない気持ちであるため、本人も「へんてこな気もち」と表現しています。

その後、タイタニック号で他人の命を救うために自分を犠牲にした青年たちと出会うことで、ジョパンニは他人のために尽くす行為を学びます。

あるいは、女の子から聞いた「さそりの話」も同様です。

ジョパンニは、他人に対して気の毒ですまいない気持ちを頻繁に感じながら、その人たちの幸のために自分が何をするべきなのかをずっと考えています。

銀河鉄道の旅を通して、ジョパンニが「他人の幸福のために尽くす」という行為を、乗客たちから学び、成長していくのが本作の重要なテーマなのだと思います。

カンパネルラの死は必然的!?

現実世界でカンパネルラが死んでしまう結末に驚いた方も多いのではないでしょうか。

実際には、鉄道に乗り込んで間も無く、カンパネルラの死を匂わせる描写が綴られています。

カンパネルラは「母親の1番の幸福とは何なのか」を考えています。そして、「本当にいいことをすれば幸だから、お母さんも僕を許してくれるだろう」と話し、決心したような表情を見せます。

要するに「本当にいいこと」とは「ほんとうのさいわい」であり、他人のために尽くす行為を意味します。

おそらく、カンパネルラは他人を助けて自分が犠牲になる行為が、母親にとって本当に幸せなのかと葛藤していたのだと思います。

決心したカンパネルラは、ザネリを救うかわりに、川に流され死んでしまいます。

鉄道の中でカンパネルラが見せた泣きそうな表情は、友人を救って死ぬ自分を許してほしいと、母への謝罪の意が込められていたのでしょう。また決心の表情は、ザネリを救って自分が死ぬことに対する決意だったのだと思います。

おそらく、ジョパンニだけではなく、カンパネルラも人一倍他人に尽くす行為に葛藤していたのだと思います。

なぜなら彼は、同級生にからかわれるジョパンニを、ずっと見て見ぬふりをしてきたからです。

気の毒なジョパンニのために行動できない罪悪感が、常に彼に付きまとっていたのではないでしょうか。だからこそ、最期は他人の身代わりになる行為によって、自分の命を費やしたのでしょう。




銀河鉄道は天国への列車

そもそも、銀河鉄道に乗り込んだ人々は死後の世界に向かっていたのだと思われます。

最後に出会った青年たちも、タイタニック号で他人の身代わりになって海に飲み込まれた結果、鉄道内にやって来ました。

あるいは、タイタニック号の男の子と女の子の母親は、既に死んでいると記されています。そして彼らが天上へ行くために下車する場面では、「天上に母も行っている」と女の子が口にします。

銀河鉄道は、「ほんとうのさいわい」を実行して死んだ人々が天上へ行くための乗り物だったのでしょう。

ただ例外として、ジョパンニだけが最後まで生き残りました。他の乗客たちとジョパンニには違いがありました。それは切符の種類です。

ジョパンニだけがどこへでも行ける特別な乗車券を持っていたのです。

一方、カンパネルラは通常の鼠色の小さな切符を車掌さんに見せていました。つまり、カンパネルラは特別な切符を持っていないため、他の乗客と同様、死後の世界へ向かう存在だったということが暗示されていたのでしょう。

第1稿から第4稿までの間の変化点

本記事の序盤に記した通り、『銀河鉄道の夜』は未完の作品です。そして、第1稿から第4稿の間に多くの変更が加えられています。

まず、初期と最終盤の大きな違いは、銀河鉄道の旅が意図的か、幻影かという設定の種類です。

今回紹介した最終稿ヴァージョンでは、丘で見た幻影の経験が、ジョパンニを成長させるという展開でした。

しかし、初期のバージョンでは、「ブルカニロ博士」というキャストが登場し、彼の実験によってジョパンニが夢の中で銀河鉄道の旅をするという設定になっています。

そして、実験の後にブルカニロ博士が、「夢の中で見たとおり幸せをさがしてまっすぐに進むがよい」と告げて物語がエンディングへ向かいます。

ブルカニロ博士の存在を完全に排除した最終稿は、神秘的な世界観が強調されて、不思議な魅力を残したまま銀河鉄道の旅が終了します。

また、最終稿ではジョパンニの父の不在の理由が曖昧でした。特に背景が描かれることはなく、「刑務所に入っているわけがない」というジョパンニの一方的な思いだけが綴られています。そして、最終的には父親は帰ってくる兆しを残して物語は終わります。

しかし、初期の原稿では、ジョパンニの父親は密漁師のうえ、暴行により刑務所に入っている設定です。尚且つ、父親が帰ってくる展開もありません。

その他にも、序盤の学校の描写や、ジョパンニが活版所で働いている設定、カンパネルラが死ぬ展開などは、第4稿で追加された内容になります。




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言わずと知れた国民的童話作家、宮沢賢治。

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