宮沢賢治『ポラーノの広場』あらすじ考察 賢治が求め続けた理想郷ユートピア

ポラーノ広場1 散文のわだち
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宮沢賢治の小説『ポラーノ の広場』は、数少ない作品集の表題作です。

『銀河鉄道の夜』『風の又三郎』『グスコーブドリの伝記』と並んで、長編小説に位置付けられています。

『ポラーノ広場』作品概要

作者宮沢賢治(37歳没)
発表時期1934年(昭和9年)
ジャンル長編小説
少年小説
テーマユートピア
資本家批判

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『ポラーノの広場』あらすじ

あらすじ

博物局員のキューストは、少年ファゼーロからポラーノの広場の伝説を聞く。そこは、人々が集まってコンサートや歌を楽しむ理想郷だった。

興味を持ったキューストは、少年ファゼーロとミーロと共に、ポラーノの広場を探しに出かける。しかし、実際の広場は、県議員である山猫博士らによる、政治家の酒盛りの場になっていた。酔った山猫博士はファゼーロと一悶着を起こし、その夜、二人の行方が分からなくなる。誰もが山猫博士がファゼーロを誘拐したと思っていた。

実際には山猫博士はファゼーロの失踪と無関係だった。山猫博士は広場で密造酒を製造し、その会社が倒産したため、責任を放棄して逃亡したのだ。そのため、ファゼーロは無事に帰ってくる。ファゼーロはしばらく革染めの技術を学びに行っていたのだ。その技術を活かし、彼は自分の手で、本当のポラーノの広場を造ると誓った。  

宣言通りファゼーロは、組合を結成したり、特産品を生み出したりする。自分達の手で理想郷を創り上げたのだ。一方でキューストは博物局員を辞め、大都会トキーオで働くことになった。ある日、都会に馴染めないキューストの元に楽譜が届く。そこには聞き覚えのあるポラーノの広場の歌が印刷されており、彼は昔の友人たちを懐かしむのであった。 

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『ポラーノの広場』個人的考察

個人的考察

理想郷:羅須知人協会について

少年達が理想郷「ポラーノの広場」を探す物語の背景には、賢治が創設した「那須知人協会らすちじんきょうかい」が関係していると思われる。

「那須知人協会」とは、岩手県花巻市の宮沢家別宅を改造して作った、農村私塾である。賢治は自身の科学の知識を活かし、農民たちに向けて農民講座を実施していた。あるいはクラシックレコードの鑑賞会や、楽団の結成、童話の読み聞かせなども行っていた。

これらの活動目的は、農村文化の創造と発展である。賢治主導で、人々を教育し、理想的な農村(自治区)を作り上げようとしていたのだ。

賢治は若い頃から自分なりの理想郷を思い描いていた。彼の物語は、架空の岩手県「イーハトーブ」が舞台になっていることが多いが、それは賢治の描く理想郷が反映された、おとぎの国のようなものだ。そして賢治は自らの理想郷観を具現化させるために、那須知人協会を創設し、農民を教育して独自の自治区を築き上げようとしたのだ。

しかし那須知人協会は、その斬新な活動内容から、保守的な農民から理解を得られなかった。これは賢治にとって大きな挫折であり、彼を生涯悩ませた課題でもあった。

つまり、賢治の人生とは、理想郷を探し求める旅のようなものだったのだ。

これらの背景を踏まえると、少年たちが探した「ポラーノの広場」とは、賢治が追い求めた理想郷と重なっていることが分かる。

ただし、少年達が見た「ポラーノの広場」は、思い描いていた理想郷とはかけ離れていた。そもそも理想郷、ユートピアとは、「Nowhere(どこにも存在しない土地)」という意味だ。政治家や資本家に支配されない、人々のためだけの土地、そんな場所はどこにも存在しない。それでも賢治は理想郷を求めて奮闘し、その葛藤が本作の物語の題材になっているのだろう。

腐敗したポラーノの広場の現実

少年達が見つけ出したポラーノの広場は、まるで賢治が思い描いた理想郷とはかけ離れていた。

山猫博士が選挙活動の一環で人々に酒を振る舞う、政治目的の場所になっていたのだ。

それどころか山猫博士は、ポラーノの広場に工場を作り、粗悪な密造酒を製造していた。その密造酒を政治目的で利用していたのだ。そして会社の株が暴落した途端、責任を逃れるために姿をくらます始末である。

かつてのポラーノの広場は、賢治が描いた真の理想郷のはずだった。ところが山猫博士の支配により、汚い金と力が働く、かけ離れた姿になってしまったのだ。

つまり、本来人々が自由に暮らしていた土地が、資本家や権力者の支配下になり、その結果この世界から理想郷が消えてしまったということだろう。賢治の作品には、しばしば資本家批判が描かれるが、本作は特にプロレタリア的な要素を感じさせる物語になっている。

賢治が追い求めた理想郷とは、資本家から自由を取り戻した土地、人々が自主的に文化を発展させる土地なのかもしれない。そして資本家から自由を取り戻すためには、人々が教養を得る必要があり、そのために賢治は那須知人協会を創設したのではないだろうか。




自主的に理想郷を作り上げる

理想郷を「存在しない土地」に終わらせない結末に、賢治の信念の強さが感じられる。

行方不明になった少年ファゼーロは、実は一時的に革染めの工場で働き、職人の技術を磨いていた。そして、その技術を活かして、ポラーノの広場に産業組合を立ち上げ、皮類やハムなどの特産品を作り上げるにまで発展させた。

一生懸命探したポラーノ広場は政治目的の場所になっていた。しかし、ファゼーロは、本当のポラーノの広場がまだどこかに存在している気がしてならなかった。だからこそ、彼は自らの手で、本当のポラーノの広場を作り上げようと決め、実現させたのだ。それは賢治自身の決意表明でもあったと考えられる。

ファゼーロは決意表明として、「自分には出来る、なぜならそれを今考えているから」と口にする。かつて山猫博士に支配されていた時代は、人々は疑ったり考えたりすることなく、酒盛りで酔っ払って、結果的に権力者に従順になっていた。しかし、人々が疑うことを、考えることを始めた時、理想的な社会を作り上げることは可能だと、賢治は訴えていたのではないだろうか。

理想を語るのは簡単である。逆に敗北を認め権力者に従順になるのはもっと簡単である。最も困難なのは、理想を実現させるために行動することだ。そして理想を実現させるには、人々に教えを説き、納得させる必要がある。賢治は確かに行動した。結果的に人々に理解されず苦しんだのも事実だが、彼は最後まで諦めずに闘い続けた。

賢治の素晴らしさを挙げればキリがない。しかし、一つ断言できるのは、自己犠牲によって最期まで奮闘し、そうして朽ちていった賢治の生涯は美しい、ということだ。美しい人間が残したメッセージは、いくら時代が移り変れど、色褪せることがなく、永久に語り継がれる。

キューストの孤独感

物語は、博物局員キューストの目線で描かれている。彼が目にした、少年たちの一連の出来事が描かれているわけだ。

ファゼーロが本当のポラーノの広場を作る決心をしてから数年後、キューストは土地を離れ、荒んだ大都会トーキオで、孤独に暮らしていた。

そんなキューストの元に手紙が届く。その手紙には「ポラーノの広場のうた」が綴られていた。おそらくファゼーロから送られたものだが、しかしキューストには誰が作った歌か見分けがつかなかった。

おそらくキューストとは、宮沢賢治本人を反映させた人物だと言える。では、なぜ人々が作り上げた理想郷に、キュースト(賢治)自身は不在なのか。彼の孤独感の正体とは何なのか。

賢治の思想には、法華経にも通づる自己犠牲の美学がある。例えば、『銀河鉄道の夜』では、カンパネルラは同級生を助けるために死ぬ。あるいは銀河鉄道の車窓からは、自己犠牲のために燃え続けるサソリが見える。『よだかの星』では、醜い鳥「よだか」が、自己犠牲の意味として焼身して星になる。

このように賢治は、人々のために心身を燃やし、結果的に昇天(死)することを、一つの自分の理想的な結末として描いていた。だからこそ、『ポラーノの広場』では、キューストは既に理想郷には不在だったのではないだろうか。理想が実現された時には、その場に自分はいない。それは賢治の本望であり、しかし、どことなく賢治の孤独感が漂っているように思う。




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