日本を代表する天才詩人、中原中也。
生涯350篇以上の詩を残し、その多くが教科書に掲載されていますが、生前はほとんど評価されず、30歳の若さでこの世を去りました。
不遇な作家人生を歩んだ彼は、私生活がかなり破天荒で、太宰治、石川啄木と合わせて文豪三大クズと言われています。
とにかく酒癖が悪く、多くの人間に喧嘩をふっかけた素行の悪さで有名。
今回は、中原中也の破天荒なクズエピソードを紹介していきます。
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プロフィール
銀座の写真館で撮影
名前 | 中原中也(30歳没) |
生没 | 1907年ー1937年 |
出身地 | 山口県 |
死因 | 結核性脳膜炎 |
職業 | 詩人 |
作品の主題 | 喪失感 哀惜 憂鬱 |
代表作 | 『山羊の歌』 『在りし日の歌』 |
■参考文献
生い立ちと死因
中原中也は1907年の明治末期に、代々開業医を営む名家の長男として生まれた。
両親は長らく子供に恵まれなかったため、ようやく誕生した中也を大事な跡取り息子として、異常なくらい過保護に育てた。階層の違う子供と遊ぶことを禁じ、溺れる危険性のある水泳も許さなかった。
さらに両親は過度に教育熱心だった。勉強のために中也を納屋に閉じ込めたり、時に煙草の火を押し当てて罰を与えることもあった。完全に毒親とか虐待の類である。
両親の教育方針は異常だが、しかし中也はその期待に応える頭脳を持っていた。神童と呼ばれるほど成績優勝な少年だったのだ。
このままいけば期待通りの優秀な医者に・・・
しかしそうならないのが文豪である。中学に入学すると文学に夢中になり、中也は不良の道を突き進むことになった。
8歳で詩を作り、不良少年へ
中也が詩作を始めたのは、なんと8歳の頃で、きっかけは弟の死だった。
弟の亜郎が5歳の時に脳膜炎で死去し、その悲しみを歌ったのが詩作の始まりだ。さらに小学6年生の頃には短歌を作り始め、既に雑誌や新聞に掲載されている。
ここから中也の不良人生が幕を切る。
中学には12番の成績で入学したが、文学に夢中になった影響で、底辺の120番まで転落する。さらに飲酒や喫煙を覚え、典型的な文学不良少年になっていった。
おまけに3年生への進級に落第する。父親はショックで数日間仕事に出られなかったが、中也は落第を万歳して答案を破いた。
そして本格的に詩人を志すようになる。
失恋の悲しみ
落第したことで、両親は世間体を気にし、中也を京都の中学に編入させた。
両親の元を離れ京都で下宿を始めた中也は、3歳年上で女優の卵の長谷川泰子と出会い、芸術の道を志すもの同士強く惹かれ合う。中也は自分の詩を泰子にいち早く見せ、彼女は心から称賛してくれた。
やがて二人の同棲生活が始まる。16歳と19歳の早熟な恋愛だった。
中也にとって泰子は1番の理解者となった。だからこそ、失恋の悲しみは中也の心に深い傷を残した・・・
受験のために上京した中也は、書類不備や遅刻が原因で落第となる。予備校に通う条件で両親から仕送りを受け、そのまま東京で泰子と一緒に暮らすようになる。ところが泰子は、中也の親しい友人である小林秀雄に惹かれ、やがて中也の元を去ってしまう。
とにかく私は自己を失つた! 而も私は自己を失つたとはその時分つてはゐなかつたのである! 私はたゞもう口惜しかつた。私は「口惜しき人」であつた。
『我が生活/中原中也』
恋の裏切りを経験した中也は、その悲しみと悔しさで自己を見失った。
何年経っても心の傷は癒えず、度々彼の詩には泰子が登場する。弟の死の悲しみで詩作を始めた中也だったが、失恋の悲しみもまた、彼の詩作に大きな影響を与えたのだ。
度重なる愛する者の死
その後、中也は愛する者の死を何度も経験し、少なからずそれが中也の死に影響している。
まず中也が21歳の頃に、父が死去する。母は世間体を気にし、定職に就かない不良青年の中也を葬儀に出席させなかった。
肉親の葬儀に出席させてもらえない屈辱とは、どれほどのものであっただろうか?
さらに3年後、弟の恰三が肺結核で死去する。父の死に目に会わせてもらえなかった中也は、弟の死に顔は見せてくれと母に懇願した。
翌年、中也は初の詩集『山羊の歌』の自費出版を企てる。しかし中也には信用も人望もなく、ほとんど出資金が集まらなかった。その頃から中也はノイローゼになり、次第に強迫観念や幻聴に悩まされるようになる。
同年には結婚して家庭を持つようになる。それは母に言われるがままのお見合い結婚だった。これまで両親に反発してきた中也だが、結婚については母に従順だったようだ。だが詩作で生計を立てるのは厳しく、依然として母から仕送りをもらっていた。
中也は息子のことを溺愛していたが、2歳の頃に結核で死亡する。それは中世にとって人生最大の悲劇だった。
中也は3日間1睡もせず息子を看病し、葬儀では息子の遺体を抱いて離さず、棺に入れさせようとしなかった。
愛するものが死んだ時には、自殺しなけあなりません
『春日狂想/中原中也』
これは息子の死に傷心した中也が作った詩の冒頭だ。彼の精神は目に見えて衰弱していく。幻聴が酷くなり、幼児退行したような言動が目立つようになった。
間もなく中也は体調を悪化させ、結核性の脳膜炎にかかり、30歳の若さでこの世を去った。
両親の教育、愛する者の死、恋人の裏切り。そういった出来事が中也の精神を蝕み、破滅的な性格を形成し、そして死に追いやったのかも知れない。
酒乱エピソード
8歳で詩作を始め、中学で酒や煙草を覚え、文学不良少年になった中也。
そんな彼には酒に関する逸話が多く存在する。
器物損害で留置所へ
中也は仲間たちと「白痴郡」という同人雑誌を創刊する活動を行なっていた。
ある日、活動仲間たちと酒を飲んだ帰り道に、中也は酔っぱらった勢いで、沿道の家の外灯を傘で叩き壊す。偶然その家の主人が町会議員だったため、彼らは交番へ突き出される。
仲間たちは芸術活動とは別に教師という定職に就いていたため、すぐに釈放される。しかし、唯一定職に就かない中也は、身分が不明であることを理由に、15日間も留置された。
今で言う、「職業不詳」や「自称○○」といった悪意ある報道のそれと似ている。無職の中也には社会的信用が一切なかったわけだ。
バーを閉店させる
日本の有名な装丁家・美術評論家に青山二郎がいる。彼は多くの文学者と交流があった。
当時、青山次郎は死別した夫人の弟にバーを出店させてやった。彼の交流上、常連はもちろん文学者たちが大半を占めていた。
常連の1人である中也は、毎日のようにバーに訪れては、誰彼構わず喧嘩を吹っかけていた。
おかげでバーの評判は悪くなり、1年足らずで閉店してしまった。
坂口安吾に喧嘩をふっかける
中也は、前述したバーで坂口安吾と知り合う。
中也が気に入っていたバーの女給が、坂口安吾を好いていると知り、彼は嫉妬のあまり喧嘩をふっかける。
「やいヘゲモニー」
これは権力者を揶揄した悪口である。
悪口を吐いて喧嘩をふっかけたものの、坂口安吾が大柄だったため、中也は距離をとった場所で拳を振り回すだけで、実際に殴りかかりはしなかった。中也の口先だけのシャドーボクシングを見て、坂口安吾は大笑いしたようだ。
ちなみに坂口安吾はこの出来事を随筆で書き残している。
なんでも中也は本気で女に嫉妬していたわけではなく、坂口安吾と仲良くなりたいがために、わざと喧嘩をふっかけたようだ。
不器用な中也なりのコミュニケーションだったのだろう。
ビール瓶で殴った後に号泣
「殺すぞ」
余りにも露骨すぎる暴言を吐いた中也は、ビール瓶で作家の中村光夫をぶん殴った。
若くして文壇の地位を獲得した中村に対して、ほとんど無名だった中也は、嫉妬やひがみの感情から暴行事件を起こしたようだ。
あまりに愚劣な行為に、同席していた青山二郎は、「殺すつもりなら、なぜビール瓶のふちで殴らないのだ、お前は、横っ腹でなぐったじゃないか、卑怯だぞ」と中也を説教する。
すると中也は、「俺は悲しい」と叫んで、おんおん泣き出したようだ。
NHKのコネ面接で不採用になる
生涯定職に就かず、親の仕送りと詩作だけで暮らした中也。
そんな彼もかつて1度だけ就職面接を受けたことがあった。妻の親戚のコネで、NHKに入社できるチャンスが訪れたのだ。おそらく親族たちの口車に乗せられ、半ば無理やり就職を迫られたのだろう。
中也は履歴書の経歴欄に「詩生活」とのみ記載し、面接官に問われても、「それ以外の履歴が私にとって何か意味があるのですか?」と突っかかったようだ。
「経歴:詩生活」とは・・・
当然、NHKの採用試験は落第となった。コネ面接を不採用になるのだから、わざと悪態を吐いて定職に就くのを回避したのだろう。根っからの社会不適合者である。
15歳の頃に詩を一生の仕事にすると決めた彼の意思は、生涯揺らぐことのない確固たる信念として貫かれたわけだ。
太宰治と犬猿の仲!?
中原中也と太宰治は犬猿の仲だった。
お互いまだ無名だった頃、太宰治は「青い花」という同人誌を創刊するにあたり、才能を見込んで中也を誘った。
ところが初めて顔を合わせた酒の席で、中也は太宰に暴言を吐く。
「青鯖が空に浮かんだような顔をしやがって」
酔っぱらった中也は、「お前は何の花が好きなんだい」と尋ね、太宰が泣きそうな声で「桃の花」と答えると、「チエッ、だからおめえは」と散々こき下ろした。
その後も中也は何度も喧嘩をふっかけた。
ある時、酒の席で中也に絡まれ、太宰が逃げるように帰ったことがあった。すると中也は太宰の家に夜襲をかける。太宰の内縁の妻が、「いま眠っています」と中也を説得しても、彼は全く聞き入れず、勝手に太宰の枕元まで上がり込んでしまう始末だ。
その場に居合わせた檀一雄は、見兼ねて中也を家の中から引っ張り出し、雪の積もる往来に投げ飛ばす。
小柄で弱っちい中也は、腕っぷしのある檀一雄に投げ飛ばされて一言。
「わかったよ。おめえは強え」
負けると分かっているくせに喧嘩をふっかける無茶苦茶な男なのだ。
散々迷惑を被った太宰は、中也のことを次のように非難した。
「ナメクジみたいにてらてらした奴で、とてもつきあえた代物じゃないよ」
お互いを「青鯖が空に浮かんだような顔」「ナメクジみたいにてらてらした奴」と批判し合う彼らの独特な言葉選びは、まさに文学者の才能を感じさせる。
このように犬猿の仲だった2人だが、中也の若すぎる死に対して、太宰は才能を惜しんで次のような言葉を残している。
「死んで見ると、やっぱり中原だ、ねえ。段違いだ。」
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