【樋口一葉の拗らせエピソード】お札になった文豪が遊女と交流

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樋口一葉 文豪のわだち

明治時代を代表する女性作家・樋口一葉。

5千円札紙幣の肖像に選ばれたことでも知られています。

本名記事では、そんな樋口一葉の波瀾万丈な出生や経歴を紹介します。

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樋口一葉のプロフィール

ペンネーム   樋口一葉(24歳没)   
本名樋口奈津
生没1872年ー1896年
(明治5年ー明治29年)
出身地東京都千代田区
死因結核
主題ロマン主義文学
遊女の人生
代表作『大つごもり』
『にごりえ』
『たけくらべ 』
『十三夜』

▼参考文献

お札の肖像に選ばれた文豪

「5千円札の肖像なのは知ってるけど・・・」

恐らく大半の人がこの程度の認知で、もはや紙幣としての印象に尽きるでしょう。

基本的に日本紙幣の肖像に選ばれるのは、歴史的な政治家や神話上の人物が定例でした。しかし近年では文化人が採用されることもあります。今では記憶に薄いかもしれませんが、明治時代の大文豪である夏目漱石はかつて千円札の肖像でしたよね。

そして唯一女性の文学者として採用されたのが今回紹介する樋口一葉です。

参考文献『文豪の死様』の著者によれば、紙幣の肖像に選ばれるポイントは下記です。

  • 時代が近すぎない(近親の都合上)
  • お上に逆らうような思想がない
  • 品行に問題がない

なるほど、ともすれば芥川龍之介や太宰治みたいに、破滅的でメチャクチャな生涯を歩んだ文化人は選ばれないわけですね。

こういった点から、短命ゆえにボロを出さなかった、そして女性蔑視が当然とされた時代にもかかわらず活躍した女性、樋口一葉が相応しかったのかもしれません。

一体彼女はどんな生涯を送ったのでしょうか?

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平民生まれの貧乏人

樋口一葉は明治時代を生きた女性です。両親はもともと江戸時代の農民だったようですが、幕末に武士の身分を手に入れています。

農民から武士になる・・・?

当時の身分制度は抜け道があって、例えばお金で武士の身分を買えたようです。あるいは、新撰組なんかは農村出身の次男坊たちが勝手に武士になったわけですから、本当に曖昧な仕組みだったわけです。

ところが、間も無く明治維新が起こります。樋口一葉の両親はせっかく武士の身分を手に入れたのですが、江戸時代の終焉によってそれが意味を為さなくなります。時代の変遷によって金で買った特権は台無しになり、無価値なプライドだけが残ったようです。

来る新時代、イケイケドンドンの風潮にのまれ、父親は実業家を目指して財産を全て投資で溶かしてしまします。間も無く多額の借金だけを残して父親は死んでしまいます。

なんて迷惑な父親なんだ・・・。

その結果、樋口一葉は16歳にして、借金を抱えながら母と妹を養う運命を強いられます。

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お嬢様学校でいじめられる!?

「女性に学問なんて・・・」みたいな考えが当然とされた明治時代です。母親の意向により樋口一葉は12歳で学校を辞めさせられます。

しかし、あまりに学習意欲の強い娘のために、父親は上流階級の子女が通う学校で和歌や古典を学ぶことを許してくれます。それと言うのも和歌や古典は、いいとこの娘が嫁入りする際に邪魔にならない教養だったのです。父親はかつて武士になれたという封建的なプライドから、娘を上流階級の学校に無理して通わせることに愉悦していたのかもしれません。

とは言え、平民の樋口家にお嬢様学校の学費が払えるわけがありません。樋口一葉はズバ抜けた秀才だったため、学校で下働きをするという条件で特別に入学が許されたのです。

ところが周りを見渡せば裕福な育ちの娘たちばかりです。樋口一葉は家柄だけで彼女たちに蔑まれ、嘲笑される日々を送ります。

まさにリアル花男状態・・・

プライドとコンプレックスの天秤に苦しんだ樋口一葉はどうなったか。完全に捻くれて、心を閉ざした、拗らせ女子になってしまいます。

苦労知らずのお嬢様に囲まれ、彼女たちに蔑まれる日々。その一方で自分は下働きをしながらギリギリの生活で勉強に勤しむ。挙句、父親が借金を残して死んでしまい、一層過酷な生活苦を強いられたのです。

もはや拗れて当然ですよね。もし同じ境遇だったら誰だって心を閉ざして、腹の中で金持ちどもを憎むでしょう。あるいは流行の「親ガチャ」を嘆いて、めちゃくちゃグレる可能性だってあります。

こんな過酷な状況から、樋口一葉はどうやって突破口を見出したのでしょうか?

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家計のために作家を目指す

過酷な生活苦を強いられた樋口一葉。当時は女手一つで生計を立てられるほど成熟した時代ではありませんでした。

彼女にヒントを与えたのは、同じ学校に通う田辺花圃でした。良家の生まれである彼女は、当時は珍しい執筆で収入を得る最先端の女性だったのです。

彼女に書けるなら自分にも書ける。思い立ったが吉日。こうして樋口一葉の小説家としての人生の幕が開かれたわけです。

破滅的な承認欲求や、思想啓蒙ではなく、貧困のために執筆を始めたのですから、紙幣の肖像に選ぶに相応しい美談ですね。

作家になるにあたって、彼女は半井桃水という男に弟子入りします。ところが樋口一葉は年頃の娘、なんと彼に恋をしてしまいます。おまけに周囲では勝手な噂が広まってしまいます。色恋のあるあるですね。

なんとウブな樋口一葉は周囲の噂に負けて、半井の元を去ることになります。

儚い恋の終わり・・・

色恋沙汰もありつつ、一応は文壇デビューを果たした樋口一葉でした。

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吉原の遊女との交流

執筆での収入を確保したものの、家計を支えるほどの安定した金額ではありませんでした。

そこで彼女は江戸の遊郭「吉原」の近くで小間物屋を始めます。それが偶然にして、最大の転機になるのでした。

皆さんは、代表作『たけくらべ』を読んだことがありますか?

実は、遊女をテーマにした物語なんです。

将来遊女になる運命の女の子が、いずれ僧侶になるお寺の男の子と恋に落ちるという儚い恋物語です。

身分の違いによる叶わない恋をテーマにした大衆ドラマは沢山ありますが、遊女と僧侶って。めちゃくちゃ面白そうでしょ??

あるいは代表作『にごりえ』も、遊女が妻子持ちの客と恋をする物語です。

樋口一葉は吉原の遊郭の近くで暮らすうちに、自分の身一つで生計を立てる遊女たちに感化されていったのです。遊女との交流によって、自分の小説の主題を築いていきます。

結果的に彼女の小説はバカウケするのでした。

それだけではなく、遊女との交流は樋口一葉の人格をも成熟させます。

賛否両論あるみたいですが、拗らせ女子だった彼女は徐々に悪女へと身を染めていったようです。実際に、占い師の男性に漬け込み、お金を援助してもらっている時期がありました。

遊女の生き様から女の武器を学び、かつてのウブな自分とは決別したのかもしれません。

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死ぬ直前に無双モード

樋口一葉は24歳という若さで、結核で亡くなりました。

彼女は死ぬ前の14か月間で、一種の無双モードに入ります。

  • 『たけくらべ』
  • 『にごりえ』
  • 『十三夜』
  • 『ゆく雲』

これら最高傑作を、14ヶ月の間に次々と生み出したのです。

島崎藤村、森鴎外、幸田露伴など、名だたる文豪たちが彼女の作品を評価します。

とは言え、当時は女性の作家はごく稀であったため、「オタサーの姫」のような扱いを受けていたのではないか、と『文豪の死に様』の著者は記しています。

結構ストーカーまがいな寵愛を受けて、おっさんたちが親衛隊として囲っていたようです。

我れを訪う人十人に九人まではただ女子になりというを喜びて、珍しさに集うなりけり。(中略)誠は心なしのいかなる底意ありとても知らず。

彼女の日記を見る限り、女だから注目されていることに本人も気づいていたようです。

あるいは根本的には拗らせ女子の気質があるため、素直に周りの称賛を受け取れなかったのかもしれません。

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早死にゆえの評価・・・?

いずれにしても、確かな才能を開花させた樋口一葉でしたが、それも束の間、結核に感染した3か月後に息を引き取ります。

『文豪の死に様』の著者は、もし樋口一葉が長生きしていたら悪女に染まっていたかも、という面白い考察をしています。

遊女との交流によって女の武器を学び、それが結果的に作家の成功に繋がったわけです。その先にどんな運命が待ち受けていたのか・・・。

早死にだったからこそ、下手にボロを出すことが無く、品行方正なイメージをキープすることが出来たのでしょう。

最後に問う。

・破滅的な生涯を送って、後世の若者に読み継がれる作家
・刹那的な輝きを放って、後世にお札のイメージばかりが残る作家

あなたはどちらの方が美しいと思いますか?

現代語訳版がおすすめ

樋口一葉の『たけくらべ 』を読んで、途中で挫折した人も多いのではないでしょうか。

そうです、森鴎外の『舞姫』などと同様、現代人の我々には慣れない文章表現で、てんで理解できないわけです。

そんな人には現代語訳版の『たけくらべ』がおすすめです。現代語訳&注釈はもちろん、図版やコラムなども交えて、非常に判りやすい内容になっています。

「ビギナーズ・クラシックス」というシリーズで、それこそ『舞姫』や『こころ』などが多くの作品が読みやすく翻訳されています。

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