梶井基次郎 モテない文豪のやさぐれエピソード

梶井基次郎 散文のわだち
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義務教育を経て、高等学校に進学した我々は、これまで多くの文学作品に触れたことでしょう。

午後の汗ばんだ教室で、まぶたに優しい澱みを感じながら、現代文の先生の声が意識の外側でチラチラと聞こえていた記憶。

果たして、あの時の授業の題材は誰の作品だったのでしょうか。芥川龍之介か、太宰治か、川端康成か、三島由紀夫か。

今でこそ学校教育の題材になるような、普遍的な賢人として扱われていますが、文豪たちの私生活はしっちゃかめっちゃかであるのが世の常です。

我々は過去の出来事を美談にすり替えるのが得意な生き物なので、彼らのクズ人間っぷりを耽美に語りがちです。脚色を加えすぎて、文豪は皆色男のような偏見さえ持つ始末です。実際に、文豪は女を取っ替え引っ替え、それも執筆の肥やし、などと芸術至上主義的な印象を持つ人も多いことでしょう。

しかし、当然モテない文豪だって存在したに決まっています。

モテない故に、繊細な詩心があってはいけませんか。否、それはれっきとした文学作品になり得ます。

今回は、悲しいくらいモテなかった文豪のうち、梶井基次郎に焦点を当てて、クズエピソードを紹介しようと思います。

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梶井基次郎のクズエピソード

プロフィール

ペンネーム梶井基次郎
生没1901年ー1932年
出身大阪
主題孤独、ニヒリズム
秘かな美、背徳の美
美のテロリズム
代表作『檸檬』『城のある町にて』

モテない文豪の童貞卒業秘話

がっしりとした体格で、無骨な顔つきが特徴的な梶井基次郎。

彼の生涯は、あまり女性に恵まれたものではありませんでした。事実、本人すら「女に好かれない怪奇な顔」と自身のモテない容姿を認めていました。

ある時、男友達と酒をあおり、へべれけに酔っぱらった梶井は、酔いにまかせて叫びます。

「俺に童貞を捨てさせろ!!!」

彼は祇園の石段に大の字で寝転びながら、恥じらいもなく駄々をこねます。困った友人たちは、近くの遊郭へ梶井を連れていきます。遊女が現れると、梶井は意図的にゲロを吐いて女性を困らせました。童貞を卒業したい一方で、初体験に対する理想を捨てきれない彼なりの抵抗だったみたいです。しかしその夜に、梶井は望み通り童貞を捨てるとなりました。

ところがそれ以降、梶井は遊郭で童貞を卒業した夜のことを散々呪う羽目になります。

俺は純粋なものが分からなくなった」とか、「堕落してしまった」などと、あたかもかつての自分が神聖であったかのような言い分で、友人たちに愚痴をこぼすのでした。

日記の中では、自らを「ソドムの徒」と称して、童貞卒業に対する背徳感情を綴っていたそうです。

酒乱で出禁になる始末

梶井基次郎はさすが文学者だけに、京都大学の前身とされる三高に通うエリート学生でした。しかし、他の文豪たちと同様に、文学や遊郭や酒に浸り、エリート街道をドロップアウトしていくわけです。

当時の旧制高校の気風としては、西洋風のハイカラとは対照的な、野蛮な振る舞いのバンカラが主流だったようです。梶井もその気風に染まり、高下駄を履き、腰には手拭いを備え、学校内外で暴れ回っていました。

さらには酒癖の悪さも相まって、彼が迷惑をかけたお店は数知れずです。例えば、泥酔してラーメン屋の屋台をひっくり返したり、料理屋の床の間の掛物に唾を吐きかけたり、焼き芋・甘栗屋の釜に牛肉を投げ込んだり、果ては店の池に飛び込んで鯉を追っかけ回す始末です。

酒を飲むと奇行が目立つ梶井は、その酒乱ゆえに出禁になった店が多くあるのだとか・・・。

こういった堕落っぷりはやがて、家賃を踏み倒して下宿先から逃亡したり、東京帝大に進学したにもかかわらず中退する、退廃的な生活へと繋がっていきます。




本当に檸檬が好きだった

代表作「檸檬」では、抑鬱のアイテムとしての檸檬が、独特な美的感覚で描かれていました。

小説の中だけではなく、梶井基次郎本人も果物の檸檬にかなり魅了されていたようです。

リプトンの紅茶を好むほか、茶店ではレモンティーや、檸檬を浮かべたプレーンソーダを梶井は頻繁に飲んでいました。私生活では日頃から檸檬を丸ごと持ち歩いていたようです。

どれほどの間握りしめていたかも分からない、手垢まみれの檸檬を友人の作家にあげることもあったようです。

それ食ったらあかんぜ

そう言って手垢まみれの檸檬を渡された友人は、一体どんな気持ちでその爆弾受け取ったのでしょうか。

若くして結核を患った苦悩と、女性関係に恵まれなかった孤独に対して、小説の設定同様に檸檬を握る行為は、梶井にとって抑鬱や精神安定の効果があったのかもしれません。

ことごとく女にフラれる悲しい人生

本人すら「女に好かれない怪奇な顔」と自身のモテない容姿を認めていた梶井基次郎ですが、その言葉通り、彼はことごとく女にふられ続ける生涯を送ります。

20歳の梶井基次郎は、電車通学の最中に、同志社女学校の生徒に一目惚れします。彼はどうすれば自分の思いを女学生に伝えられるかと、顔に似合わず恋煩います。

散々悩んだ挙句、梶井がとった行動は、あまりにキザ過ぎました。彼は自分が持っていた英詩集の中で、男が女に告白する台詞が綴られたページを引きちぎって、女学生の膝の上に置いたのです。

後日、電車内で再会した折に、女学生に詩集を読んでくれたかを尋ねます。すると彼女は大変迷惑そうに、「知りません!」と言ってそっぽを向いてしまったのでした。梶井の告白は真摯に受け止められないどころか、女学生に恐怖感を与えてしまったようです。

またある時は、小説家「尾崎士郎」の妻「宇野千代」に心を惹かれます。

当然人妻に入れ込み始めたので、梶井のアプローチはトラブルに発展します。梶井は尾崎四郎と、千代を取り合って決闘することになります。ほとんど一発触発の状態でしたが、周囲の取りなしもあって、殴り合い寸前でことなきを得ます。

結果的に、尾崎は千代と別れることになりました。まさかの形勢逆転・・・?

ところが後年のインタビューで、宇野千代は、梶井基次郎と肉体関係がなかったことを明言しています。

しかもその理由が「自分は面食いだから」だったそうです。

遊郭で童貞を卒業した彼が口にした「俺は純粋なものが分からなくなった」という台詞。一見、モテない理想主義の戯言に聞こえますが、宇野千代のようにデリカシーの欠片もなく、公然でなんでもかんでも話してしまう女性がいるからこそ、彼の「純粋」は本当の意味で傷つけられ損なわれてしまったのではないでしょうか。

されど天才的な感覚の持ち主

モテないエピソードを引き合いに出して、散々梶井基次郎の人間性を滑稽に語ったのですが、当然は彼の才能は突出しています。若くして病気で亡くなったのが惜しいくらい、素晴らしい詩的な小説を世に送り出しました。

それと言うのも、梶井基次郎は常人よりも五感が過敏だったようなのです。

例えば、100メートル先の花の匂いが判別できるほどの嗅覚がありました。
あるいは、別部屋の話し声が分かるほど聴覚も敏感で、外から帰ってくる人の下駄の音で、その人の感情が分かる異常な感性を持っていました。
他にも、汁物に少しでも砂糖が入っていれば言い当てるくらい味覚も鋭かったようです。

こういった常人離れした感覚があったからこそ、独特な表現で秘かな美や寂寞を表現できたのでしょう。

私生活の破天荒ぶりとは裏腹に、美食家であり、西洋雑貨などの美しいものを好んだことでも有名です。

彼が愛した美しいものが憂鬱の原因になり、それを空想の中で破壊する檸檬の爆弾。

一体彼が犯された「得体の知れない不吉の塊」とは何だったのでしょうか。梶井基次郎の人間性を紐解く意味でも是非、代表作の『檸檬』を読むことをお勧めします。

下記『檸檬』のあらすじ考察もご覧ください。




参考文献

今回、梶井基次郎のモテないクズエピソードをしたためるにあたって、板野博行さんの『眠れないほどおもしろい やばい文豪』という文献を参考にさせていただきました。

この手の文献は、装飾のわりに内容が薄くてがっかりすることが多いのですが、本作は非常に情報が充実しています。この一冊で多くの文豪たちのクズエピソードを知る事ができるので、是非手に取って読んでみてください。

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以上、梶井基次郎のモテないクズエピソードを紹介しました。

長い間お付き合いありがとうございました。この文章が気に入った方は、是非シェアをお願いいたします。




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