梶井基次郎についてエピソード|遊郭で童貞卒業 代表作も紹介

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梶井基次郎 文豪のわだち

昭和初期を代表する文豪・梶井基次郎。

生涯病気に苦しみ、その憂鬱や寂寞を詩的な文体で描きました。

一方で酒癖が悪く、破滅的な生活を送っていたことでも有名です。

本記事では、そんな梶井基次郎のエピソードを紹介します。

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梶井基次郎のプロフィール

ペンネーム梶井基次郎
生没  1901年ー1932年  
出身大阪
主題孤独
ニヒリズム
秘かな美
背徳の美
美のテロリズム
代表作『檸檬』
『城のある町にて』
『櫻の樹の下には』
『冬の日』

▼参考文献

モテない文豪の童貞卒業秘話

がっしりとした体格で、無骨な顔つきが特徴的な梶井基次郎。

彼の生涯は、あまり女性に恵まれたものではありませんでした。事実、本人すら「女に好かれない怪奇な顔」と自身のモテない容姿を認めていました。

ある時、男友達と酒をあおり、へべれけに酔っぱらった梶井は、酔いにまかせて叫びます。

「俺に童貞を捨てさせろ!!!」

彼は祇園の石段に大の字で寝転びながら、恥じらいもなく駄々をこねます。困った友人たちは、近くの遊郭へ梶井を連れていきます。遊女が現れると、梶井は意図的にゲロを吐いて女性を困らせました。童貞を卒業したい一方で、初体験に対する理想を捨てきれない彼なりの抵抗だったみたいです。しかしその夜に、梶井は望み通り童貞を捨てるとなりました。

ところがそれ以降、梶井は遊郭で童貞を卒業した夜のことを散々呪う羽目になります。

「俺は純粋なものが分からなくなった」とか、「堕落してしまった」などと、あたかもかつての自分が神聖であったかのような言い分で、友人たちに愚痴をこぼすのでした。

日記の中では、自らを「ソドムの徒」と称して、童貞卒業に対する背徳感情を綴っていたそうです。

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酒乱で出禁になる始末

梶井基次郎はさすが文学者だけに、京都大学の前身とされる三高に通うエリート学生でした。しかし、他の文豪たちと同様に、文学や遊郭や酒に浸り、エリート街道をドロップアウトしていくわけです。

当時の旧制高校の気風としては、西洋風のハイカラとは対照的な、野蛮な振る舞いのバンカラが主流だったようです。梶井もその気風に染まり、高下駄を履き、腰には手拭いを備え、学校内外で暴れ回っていました。

さらには酒癖の悪さも相まって、彼が迷惑をかけたお店は数知れずです。

  • ラーメン屋の屋台をひっくり返した
  • 料理屋の掛物に唾を吐きかけた
  • 焼き芋屋の釜に牛肉を投げ込んだ
  • 店の池に飛び込み鯉を追っかけた

酒を飲むと奇行が目立つ梶井は、その酒乱ゆえに出禁になった店が多くあるのだとか・・・。

こういった堕落っぷりはやがて、家賃を踏み倒して下宿先から逃亡したり、東京帝大に進学したにもかかわらず中退する、退廃的な生活へと繋がっていきます。

本当に檸檬が好きだった

代表作「檸檬」では、抑鬱のアイテムとしての檸檬が、独特な美的感覚で描かれていました。

小説の中だけではなく、梶井基次郎本人も果物の檸檬にかなり魅了されていたようです。

リプトンの紅茶を好むほか、茶店ではレモンティーや、檸檬を浮かべたプレーンソーダを梶井は頻繁に飲んでいました。私生活では日頃から檸檬を丸ごと持ち歩いていたようです。

どれほどの間握りしめていたかも分からない、手垢まみれの檸檬を友人の作家にあげることもあったようです。

「それ食ったらあかんぜ」

そう言って手垢まみれの檸檬を渡された友人は、一体どんな気持ちでその爆弾受け取ったのでしょうか。

若くして結核を患った苦悩と、女性関係に恵まれなかった孤独に対して、小説の設定同様に檸檬を握る行為は、梶井にとって抑鬱や精神安定の効果があったのかもしれません。

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ことごとく女性にフラれる

本人すら「女に好かれない怪奇な顔」と自身のモテない容姿を認めていた梶井基次郎ですが、その言葉通り、彼はことごとく女にふられ続ける生涯を送ります。

20歳の梶井基次郎は、電車通学の最中に、同志社女学校の生徒に一目惚れします。彼はどうすれば自分の思いを女学生に伝えられるかと、顔に似合わず恋煩います。

散々悩んだ挙句、梶井がとった行動は、あまりにキザ過ぎました。彼は自分が持っていた英詩集の中で、男が女に告白する台詞が綴られたページを引きちぎって、女学生の膝の上に置いたのです。

後日、電車内で再会した折に、女学生に詩集を読んでくれたかを尋ねます。すると彼女は大変迷惑そうに、「知りません!」と言ってそっぽを向いてしまったのでした。梶井の告白は真摯に受け止められないどころか、女学生に恐怖感を与えてしまったようです。

またある時は、小説家「尾崎士郎」の妻「宇野千代」に心を惹かれます。

宇野千代を含む大勢で散歩をする機会がありました。川の流れが激しい場所に差し掛かり、集団の誰かが「こんな潮の強いところは泳げない」と口にした途端、なんと梶井基次郎は着物を脱いで橋の上から川に飛び込みました。

宇野千代は回想記に「この人は危ない、と私が思った最初でした」と綴っています。

気になる女性を前に良い格好をしたかったのでしょうが、さすがに命懸けのパフォーマンスは狂気的で、ドン引きさせてしまったようです。

何はともあれ、梶井基次郎の迸る情熱は本物。が案の定、人妻に入れ込み始めたので、トラブルに発展します。梶井は尾崎四郎と、千代を取り合って決闘することになります。ほとんど一発触発の状態でしたが、周囲の取りなしもあって、殴り合い寸前でことなきを得ます。

結果的に、尾崎と千代は破局します。

まさかの形勢逆転・・・?

しかし後年のインタビューで宇野千代は、梶井と肉体関係がなかったことを明言しています。その理由は「自分は面食いだから」だったそうです。

遊郭で童貞を卒業した彼が口にした「俺は純粋なものが分からなくなった」という台詞。一見、モテない理想主義の戯言に聞こえますが、宇野千代のように公然でデリカシーなく話してしまう女性がいるからこそ、彼の「純粋」は本当の意味で傷つけられ損なわれてしまったのではないでしょうか。

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されど天才的な感覚の持ち主

モテないエピソードを引き合いに出して、散々梶井基次郎の人間性を滑稽に語ったのですが、当然は彼の才能は突出しています。若くして病気で亡くなったのが惜しいくらい、素晴らしい詩的な小説を世に送り出しました。

それと言うのも、梶井基次郎は常人よりも五感が過敏だったようなのです。

  • 100メートル先の花の匂いを判別できる
  • 別部屋の話し声が分かる
  • 外から帰ってくる人の下駄の音で、その人の感情が分かる
  • 汁物に少しでも砂糖が入っていれば言い当てる

こういった常人離れした感覚があったからこそ、独特な表現で秘かな美や寂寞を表現できたのでしょう。

私生活の破天荒ぶりとは裏腹に、美食家であり、西洋雑貨などの美しいものを好んだことでも有名です。

彼が愛した美しいものが憂鬱の原因になり、それを空想の中で破壊する檸檬の爆弾。

一体彼が犯された「得体の知れない不吉の塊」とは何だったのでしょうか。梶井基次郎の人間性を紐解く意味でも是非、代表作の『檸檬』を読むことをお勧めします。

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儚い死に様

大正時代から昭和初期にかけて、結核が人々に与えた影響は凄まじいものでした。とりわけ文学の世界においては、死にまつわる主題を発展させたと考えられています。

梶井基次郎は20歳になる前から肺結核を患っており、31歳で亡くなる最期まで苦しみ続けました。自らの死を予期していた彼は、まさしく「死」が主題の作品を多く残しています。

東京帝国大学に進学し、晴れて東京で文学に打ち込めるかと思った矢先、わずか2年後には病状が進み、湯ヶ島温泉での転地療養を余儀なくされます。

伊豆での療養中の梶井は、ドッペルゲンガーを題材にした幻想文学の領域に踏み込みます。

当時は結核がかなり進行し、血痰が出るまで悪化していた時期です。その傍ら、新潮社から執筆依頼があったため、梶井は文壇への足掛かりと捉えて張り切っていました。ところが、病気と闘いながら執筆に取り組み、一度は締め切りを延ばしてもらったものの、ついには作品の構想がまとまらず、新潮社に頭を下げて、破約という形になりました。

病気と執筆に対する焦りが募り、毎晩寝床で「お前は天才だぞ」と3度繰り返し自己暗示をかけていたようです。ギリギリの精神状態で書き上げたのが幻想文学『Kの昇天』です。

若者が隠居し、死の恐怖と向き合う生活。それがいかに過酷であったかは、『冬の日』『冬の蝿』などの作品に生々しく綴られています。

31歳になった頃には既に死の床についていました。呼吸困難、心臓機能の低下、食欲の減衰。一方で家族や医者に当たり散らして、気に入らない看護師を帰らせたりと頑強でした。

もう手の尽くしようがないと言った母に対して、最後に梶井は「私も男です。死ぬなら立派に死にます」と自らの惨めな境遇を悟り受け入れ、息を引き取ったのでした。

人生の殆どを死の恐怖と向き合う羽目になった惨めな文豪・梶井基次郎。彼の遺した作品は、冷たいくらいに孤独で、嗚咽が出るくらい苦しくて、だけど最後まで生きようとする熱を帯びています。唯一無二です。短命であれど、彼は自分の言葉通り立派に死んだと思います。

ちなみに梶井基次郎の死に様エピソードを紹介するにあたり、下記参考文献を使用しました。

丸善で書籍を積み上げた上に檸檬を乗せて、片付けずに帰るのはバカッターの走りでは?

そういった面白い切り口で梶井基次郎のエピソードを紹介しているので非常におすすめです。

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