芥川龍之介の破滅エピソード 自殺の原因について紹介

芥川 文豪のわだち
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義務教育を経た我々は、これまで多くの文学作品に触れたことでしょう。

そんな日本が誇る文豪たちの多くは、自殺でこの世を去っていきました。

今回は、近代文学史上最も破滅的な人生を送った芥川龍之介のクズエピソードを紹介しようと思います。

芥川龍之介のプロフィール

ペンネーム芥川龍之介
生没1892年ー1927年
出身地東京都北区
主題人間の醜さと闇
利己主義
代表作『羅生門』
『鼻』
『河童』
『地獄変』
『蜘蛛の糸』

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ぼんやりした不安とは

ぼんやりした不安

「或旧友へ送る手記」という、芥川龍之介の遺書に書かれていた自殺の動機です。

生活難、病苦、精神的苦痛などは動機に至る道程に過ぎず、自分の場合は「将来に対する唯ぼんやりした不安」のために自殺するのだと記されています。

当時、この「ぼんやりした不安」という言葉が一種の流行語になり、多くの信者たちが彼の後を追って自殺するという社会現象が発生しました。それくらい芥川龍之介の死の衝撃は大きく、太宰治も彼の自殺を知って暫く引きこもっていたくらいです。

薬物自殺を決行した理由は、死体の美的嫌悪を意識してのことだったようです。首吊りは死体が醜くいから否、溺死は水泳が得意である上に苦しいから否、轢死も飛び降りも一様に見苦しいから否、その結果、薬品自殺が最善だと思ったようです。

一緒に死んでくれる女性の存在が自殺の勇気に繋がると述べていますが、自分にはそのような友達がいないし、妻をいたわる意味でも1人で死ぬことに決めたようです。

永久の眠りは幸福ではないかもしれないが、平和であるに違いない、という持論も残しています。

そして最後には、かつての自分を「自ら神にしたい1人であった」と表現します。まるで過去の栄光にすがるような言葉を残して、この世を去っていったのでした。

気が狂った母親の存在

「芥川賞」という作家の登竜門があるくらい、文学史上最も優秀で華やかな印象がある芥川龍之介。

ところが彼の生涯は苦悩の連続でした。芥川の作品に描かれる「人間の醜さ」とは、彼の内側に存在する深い闇から生まれたテーマに違いありません。

芥川龍之介の生涯に尾を引いた1番のトラウマは、やはり気が狂った母親の存在でしょう。

芥川龍之介が物心つく前から、母親は精神に異常をきたしており、彼は狂った母親を身近で見ながら少年時代を過ごしました。そして、彼が11歳の頃に母親は亡くなります。精神異常の理由は不明確ですが、長女が7歳で死んだことや、自分の妹と夫が不倫関係にあり、その不貞によって子供ができたことなどが関係していると言われています。

母の死後、芥川龍之介は母方の叔父の養子として育てられます。

父の不倫が原因で、父方の親族と母方の親族のいがみ合いは続きます。事実、芥川龍之介が学生時代に恋をした女性の家は、父方の一家と仲が良かったため、母方の親族の反対によって彼の恋は叶わなかったようです。少なからず親族のいがみ合いと失恋は、彼の心に傷を作ったことでしょう。

芥川龍之介は、いつか自分も母のように気が狂ってしまうのではないか、という不安を抱えたまま生きていました。晩年の傑作『河童』では、遺伝や家族に関する彼なりの見識が描かれており、親の精神病が遺伝することを恐れている描写が含まれています。

彼が自殺する前の衰弱した精神で執筆した「西方の人」という作品の中でも、「なぜ母は狂ってしまったのか」という文章が綴られています。それだけ気が狂った母親の存在が彼の人生にずっと付きまとっていたのでしょう。




長編小説が書けない苦痛

明治文学にはなかった、個人の内面によりフォーカスした芥川龍之介の小説は、新しい時代の文学として評価されます。事実、明治文学の父である夏目漱石に『鼻』という作品を絶賛され、それをきっかけに世間にも広く認知されるようになりました。

ところで皆さんは、芥川龍之介に長編小説の印象はありますか?

おそらく頭に思い浮かんだ有名な作品はどれも短編小説でしょう。なんと芥川龍之介は、長編小説が書けない作家だったのです。自身もそのことでかなり葛藤していたようです。

夏目漱石の絶賛と世間の期待を裏切らないような、閃悦な短編小説を多く残したのは事実です。ところが、彼の中で最初に執筆された少し長めの小説「偸盗」は、登場人物の特徴が支離滅裂だと自ら非難し、駄作とされました。続く「地獄変」という中長編小説は、中期の傑作と呼ばれるほど絶賛されたのですが、そのスピンオフ的な続編となる「邪宗門」は未完のまま終わってしまいます。

短い物語で人間の醜さを秀逸に捉えることは長けていても、長い文章になると一貫性であったり、物語の展開に行き詰まってしまうのでした。そのことが最後まで彼のコンプレックスであり、プレッシャーとして彼を押し潰してしまったのかもしれません。

相次ぐ不幸

過去のトラウマと、長編小説のプレッシャーに疲弊していた芥川龍之介に、さらに追い討ちをかけるような出来事が次々と起こります。

妻子持ちだった芥川龍之介には、しげ子という愛人がいました。そのしげ子に子供ができ、「あなたの子だ」と言って芥川龍之介は脅されていました。美化するなら、美男子すぎる故に多くの女性に執拗に追い回されていたとも言えます。

当時、北原白秋が姦通罪で告訴され、世間にバッシングされていたこともあり、芥川龍之介はしげ子の脅しをかなり怯えていたようです。そんな彼がとった行動は、3ヶ月間の中国への逃避行でした。

その後、胃腸障害や神経衰弱や不眠症などを患い、少しずつ心身ともに弱っていきます。

そんな最中、義兄が放火と保険金詐欺の容疑をかけられ鉄道自殺します。残された遺族は多額の借金を背負ったため、芥川龍之介は物書きに勤しんだり、教師として働いたりして、なんとか遺族を養うために身を粉にします。

病気、女性関係、身内の不幸、親族の扶養義務、重労働、執筆に対するプレッシャー、これらが一気にのしかかり、確実に彼は破滅へと向かい始めます。

その証拠として、晩年の彼の作品「河童」や「歯車」などでは、生死を取りあげたり、人間社会を批判するような作風になります




キリストにさえ救われなかった

度重なる不幸とプレッシャーによって衰弱した芥川龍之介は、キリスト教に救いを求めます

実際に知り合いの神父に会って、キリスト教を学び、救われようと努力したみたいです。しかし、「神はどんな人間でも救ってくれる」という言葉に拠り所を見出そうとするのですが、彼はどうしてもキリスト教の考えに共鳴することが出来ませんでした。

神父は言いました。「闇がある場所には光があります

すると芥川龍之介はこう答えたのでした。

光のない闇もあるでしょう

「歯車」という小説にも登場する台詞です。彼はキリスト教を疑っていたわけではなく、努力をしても理解することが出来なかったのです。

「西方の人」という自殺直前の衰弱し切った精神状態で綴られた作品があります。「西方」とはヨーロッパ、つまりキリスト教のことを指します。文章の内容は、ひたすらキリスト教について彼が思っていることを殴り書きした、もはや小説とは呼べない作品になっています。そして「西方の人」を書ききるやいなや、彼は自殺を決行しました。

薬品自殺を図った彼の死体の横には、聖書が置かれていたようです。

彼は、救われたい、救われたい、と願いながら、万人を救うはずのキリストにすら救われることなく、この世を去っていったのでした。

過去の自分に嫉妬した辞世の句

水洟や 鼻の先だけ 暮れ残る

芥川龍之介が残した辞世の句です。表面的な意味だけをなぞれば、体調が悪く、鼻水をかみすぎて赤くなった鼻の赤さが、夜の闇にポツンんと残っている、という哀愁を感じさせる歌に聞こえるでしょう。

しかし、この句の裏には彼の真意が隠されています。自分の人生が暮れる、つまり自殺によってこの世を去るにあたって、かつて夏目漱石に絶賛された『鼻』という小説の栄光、そういう情けないプライドだけが最後まで残っている、そんな自分の愚かさを表現した歌だったのでしょう。

「或旧友へ送る手記」においても、「かつての自分を神にしたい1人だった」と綴っています。物書きとしてかつての栄光だけが付き纏い、思うような作品が書けない苦悩が、いずれの文章からも感じられます。

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