J・M・バリー『ピーターパンの冒険』あらすじ解説|世界名作もう一つの物語

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ピーターパン2 イギリス文学

J・M・バリーの小説『ピーターパンの冒険』は、ロンドンのケンジントン公園を舞台に、ピーターパンの誕生を描いた作品である。

ディズニー映画の原作『ピーターパンとウェンディ』とは異なる、もう1つの物語が描かれている。

本記事では、あらすじを紹介した上で、物語を考察していく。

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作品概要

作者J・M・バリー
イギリス
発表時期1906年
ジャンル中編小説
児童文学
ページ数142ページ
テーマ大人になれない子供
大人になると忘れてしまうこと

あらすじ

あらすじ

生まれてから一週間が過ぎた日、ピーターパンは部屋の窓から飛び立ち、ケンジントン公園に降り立った。ピーターパンは自分を鳥だと信じているため、空を飛べたのだ。

閉園された夜のケンジントン公園では、妖精たちが姿を現す。そこに人間の子供ピーターパンがやって来たことで、園内はパニックになる。どうすればいいのか分からなくなったピーターパンは、カラスのソロモンに尋ねる。するとソロモンは、ピーターパンは鳥ではなく、鳥と人間どっちつかずの状態であることを知らせる。鳥ではない事実を知ったピーターパンは、その瞬間から飛べなくなる。

ケンジントン公園で暮らすようになったピーターパンは、ある日お母さんの元に帰りたくなる。そこで妖精たちに体を支えてもらい、自分の家に帰るのだが、かつて飛び立った窓は締められ、部屋の中ではお母さんが別の赤子を抱いていた。自分には帰る場所がないと知ったピーターパンは、その後一生ケンジントン公園で子供のまま過ごすのであった。

ある夜、閉園後のケンジントン公園にメイミーという女の子がやって来る。ピーターパンとメイミーは恋に落ちるが、二度とお母さんに会えなくなる事実を伝えると、メイミーはなくなく家に帰ってしまう。それ以来、メイミーが公園に現れることはなく、ピーターパンはずっと彼女に恋したままなのだった。

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個人的考察

個人的考察-(2)

もう一つのピーターパンの物語

本作『ピーターパンの冒険』は、もう一つの物語である。

多くの人がご存知のピーターパンは、緑の洋服を着た永遠の少年だろう。ネバーランドを舞台に彼が海賊のフック船長と戦うーーそう記憶しているはずだ。

この誰もが知るピーターパンは、ディズニー映画でお馴染み『ピーターパンとウェンディ』が原作になっている。

一方で本作『ピーターパンの冒険』は、ロンドンのケンジントン公園を舞台にした、誕生の物語である。同じピーターパンが主人公とは言え、二作品は別種類だと考え差し支えない。

ディズニー映画の原作である『ピーターパンとウェンディ』では、ピーターパンはとても勇敢で、人間の世界(大人になること)に何の未練もないように見える。ところが本作『ピーターパンの冒険』では、葛藤が描かれている。ピーターパンは人間と鳥どっちつかずの状態という設定だし、空も飛べなくなるし、母親の元に帰ろうともする。二作品ではピーターパンの性格がまるで対照的なのだ。

個人的な見解から言うなら、前者はおとぎ話的な冒険譚で、後者は文学的な冒険譚である。

つまり後者である本作では、ピターパンに迷いがあり、母親に締め出される悲劇があり、人間世界に未練があり、愛するメイミーとの離別という絶望があるわけだ。

葛藤があるという点で非常に文学的である。

漠然とイメージするピーターパンの物語には、「大人になると失ってしまう重要な何か」という教訓が込められている。それは本作でも同様である。しかし本作のピーターパンは、子供で居続ける選択をしたことで、逆に母親や愛するエイミーを失ってしまう。いずれの選択をしても、必ず何かを失ってしまうわけだ。

こうした中立的な目線から見た時に、あなたはピーターパンに何を感じるか、という問いかけこそが本作の文学的な魅力なのかもしれない。

ぜひ『ピーターパンとウェンディ』と読み比べながら、その違いを楽しんでいただきたい。

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作者の実体験から生まれた物語

永遠に大人にならないという設定は、人々の胸を打ち、「ピーターパン症候群」と呼ばれる言葉を生み出すほど、社会問題になった。

作者のJ・M・バリーは、一体どこからこんなにも共感を集める物語の着想を得たのか。

訳者のあとがきによれば、作者が少年時代に体験した兄の死が大きく関係しているらしい。

バリーの兄デイヴィッドは13歳の頃に亡くなっている。アイススケート場で転倒したことが原因だった。愛する息子を失った母は悲しみに明け暮れた。バリーは死んだ兄デイヴィッドの真似をして母を慰めようとしたみたいだが、しかし母は立ち直ることができなかった。

身内の悲劇がバリーに与えたのは、死んだ人間は歳を取らないという感覚だった。13歳で死んだ兄デイヴィッドは、永久に13歳の面影のまま人々の記憶に残り続けるからだ。こうした感覚が、永久に少年のままであるピーターパンの着想になったと考えられている。

実際に本作のラストでは、子供のうちに死んでしまった者は、ピーターパンがケンジントン公園に埋めて墓を立てる、という設定が描かれている。あるいは、本作は語り手である作者と、デイヴィットという人物がケンジントン公園を歩いて、物語を回想する形式で描かれている。

兄デイヴィッドの死が確実にバリーの創作に影響を与えている証拠だろう。

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信じることの大切さ

誰もが子供の頃はピーターパンを知っていた。だけど大人になると忘れてしまう。なぜなら大人は「信じること」をやめてしまうからだ。

本作で最も印象的なのは、ピーターパンが空を飛べなくなる場面だ。生後一週間のピーターパンは自分を鳥だと信じていた。だから彼は翼がなくても空を飛べたのだ。ところがカラスのソロモンに、自分が鳥ではない事実を知らされた途端に飛べなくなってしまう。もう自分が鳥だと信じられなくなったからだ。

これはまさに、信じることをやめた結果、何かを失ってしまう大人を揶揄しているのだろう。

なぜ人間は大人になると、信じることをやめてしまうのか。それは社会の中で他者と比較され、自分が相対化されるからだ。その結果、社会が示す「正しい生き方」に屈して、多くの人は、自分が好きなもの、やりたいことを、簡単に手放してしまう。果ては、いつまでも信じる力がある者を嘲笑し、叩き潰そうとする。

望まない人生を歩んでいる、という感覚を持って生きるのは苦しい。だから多くの人間は、「望まない人生」に対して無理に自尊心を見出そうとする。あたかも意味のある人生を歩んでいる風に、無理やり自分を騙すわけだ。そういう人間の末路は悲惨である。長いものに巻かれることに必死になり、承認欲求に飢え、価値観の違う人種や世代を批判して、自分こそが正しいのだと高慢に振る舞う。彼らは、自分が「望まない人生」を歩んでいる事実を受け入れることが恐ろしく、その恐怖から平気で他者を傷つけてしまう。周囲を見渡せば、そういう人間はすぐに見つかるだろう。

もし自分が、そういう危険な状況に陥っているのなら、ぜひ「ピーターパンの冒険」を手に取ってほしい。そこには、こんな素敵な言葉が記されている。

その夜のピーター・パンのように、飛べると心から信じきっていたとしたら、もしかしたら、人間は誰でも飛べるのかもしれません。

『ピーターパンの冒険/J・M・バリー』
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現代のピーターパンたち

作中では、大人にならない人間の象徴で詩人が登場する。社会の価値観に侵されない芸術家は、多くの人間と違って、ずっと子供のままでいられる人種なのだ。

余談ではあるが、ピーターパンが暮らすロンドンのケンジントン公園のすぐ側には、ロイヤルアルバートホールがある。そこでは多くのアーティストたちが伝説的なライブを行い、その音源は作品として残されている。ボブディラン、ローリングストーンズ、ジミヘンドリックス、CCR・・・挙げればキリがない。

ケンジントン公園が夜に閉園され、ピーターパンが姿を現す頃に、すぐ隣のアルバートホールでは、アーティストたちが演奏を始める。その二時間ほどのショーの間、会場に集まる人々は、大人になって忘れてしまった感覚を、一時的だとしても思い出すことができる。

ピーターパンとは一体誰なのか。その正体を確かめたければ、どこかのコンサート会場や、展覧会や、映画館や、その他芸術の場所に足を運べばいい。そうすれば現代のピーターパンと出会える。彼らはきっと、大人になって忘れていた感覚を思い出させてくれるだろう。

何歳だろうが子供でいることは可能だ。ただし自分の好きなことを続けている場合において。

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