村上春樹『風の歌を聴け』あらすじ考察 三部作の序章に隠された多くの謎

風の歌を聴け 散文のわだち
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村上春樹の小説『風の歌を聴け』は、デビュー作であり、連作とも呼べる初期三部作の一作目になります。

謎多き本作に散りばめられたヒントに注目して、物語の意味を考察していきます。

『風の歌を聴け』の作品概要

作者村上春樹
発表時期1979年(昭和54年)
ジャンル長編小説
テーマ執筆に対する想い、死生感、
青春の喪失感
受賞群像新人文学賞

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『風の歌を聴け』あらすじ

あらすじ

完璧な文章などといったものは存在しない

冒頭で執筆の苦悩を訴えた上で、1970年の夏の出来事が綴られます。

大学生の「僕」は故郷に帰省し、ジェイズバーで友人の「鼠」とビールを飲んでばかりいます。鼠は女性関係で悩んでいるようですが、その詳細は殆ど語られません。ただ鼠は、自分が金持ちであるにもかかわらず、金持ちに対して嫌悪感を抱いているのでした。

他方で「僕」は4本指の女性と出会い、交友関係を持ちます。彼女の胸中にも何か蟠りがあるようです。

「僕」は、鼠や4本指の女性が抱える問題について、殆ど詮索しません。あるいはこれまでの人生においても、「認識できるもの」と「認識できたもの」の間には深い溝が存在し、「僕」はいつも真実を知ることなく失ってばかりいるのです。事実、「僕」は過去に交際した女性について、何か深い闇を抱えており、酷い孤独感に苛まれているのでした。

休暇が終わり東京に戻った「僕」は、冬にもう一度故郷を訪れたのですが、4本指の女性の消息は分からなくなっていました。

その後、29歳になった「僕」は結婚し、一方で作家を目指す鼠は、毎年クリスマスになると自分の小説を送ってくるのでした。




『風の歌を聴け』の個人的考察

個人的考察

全ての謎は三部作で完結する

先に断っておくべきは、本作『風の歌を聴け』は、初期三部作のひとつだと言うことです。

主人公「ぼく」と、友人「鼠」の不可思議な関係性は、三部作を通して解明されます。

『風の歌を聴け』では、主に「ぼく」と「鼠」の身辺上の問題、あるいは過去の出来事が、抽象的かつ断片的に綴られます。いわば、三部作を通して解明される謎をほのめかしているのです。

続く二作目『1973年のピンボール』では、主に「ぼく」が抱えている孤独の原因、とりわけ過去の女性関係に焦点を当てて描かれます。『風の歌を聴け』で断片的に綴られる、死んだ元恋人の謎が解明されるわけです。

そして三作目『羊をめぐる冒険』では、主に謎だらけの男「鼠」に焦点を当てて描かれます。彼が一体何に悩んでいて、最終的にどんな末路を歩むのか、それら全てが解明されます。

それぞれの作品単体でも十分物語を楽しめるようになっていますが、散りばめられた謎を解明したい場合は、是非三部作全てを読んでみてください。

本記事では、『風の歌を聴け』の中だけで解決する謎を中心に考察します。

作家「ハートフィールド」とは

物語を挟み込むように、「ハートフィールド」という作家について綴られます。

ヘミングウェイやフィッツジェラルドなどの作家と並べて綴られるため、あたかも実在の人物のように思えますが、これは村上春樹が勝手に作り上げた空想の人物です。

では、なぜあえて空想の作家について語る必要があったのか。それはある種、村上春樹が作家を志す上での信念をハートフィールドに重ね合わせたのではないでしょうか。

ハートフィールドは、その作家人生を不毛に過ごし、最終的にはビルの屋上から飛び降りて死にました。彼は自分の闘う相手を明確に捉えることができなかったため、そのような結果に至ったのです。しかし、作中の語り手は、文章についての多くを彼に学んだと話しています。ハートフィールドが、文章を通して自分と事物との距離を測ろうとした姿勢のことを指しているのでしょう。

『風の歌を聴け』に始まる主人公の孤独感は、自分と他者(過去に交際した女性や、親友の鼠)との距離を掴めない葛藤に起因しています。その苦悩を克服する上で、ハートフィールドの「距離を測る」という教訓こそが重要な鍵になっているのでしょう。




首を吊って自殺した恋人

まず「僕」が過去に交際していた女性の謎ですが、印象的な人物が二人描かれます。

1人は作中で何度も死んだ事実がほのめかされる、3番目に交際した女性です。彼女はテニスコートの脇の雑木林で首を吊って自殺したようです。

おそらく主人公が漂わせる孤独感や虚無感の正体は、この女性との過去に起因しています。そして次作の『1973年のピンボール』で主に描かれる「直子」は、この首を吊って自殺した女性のことだと考えられます。

一応『1973年のピンボール』で、「直子」という女性を原因とする主人公の孤独感は克服されます。しかし、かなりメタファーが濃い物語によって描かれるため、その真実は正直謎めいたままです。

ただし、代表作『ノルウェイの森』に、再び「直子」という女性が登場し、主人公との関係性や、二人の間に起きた出来事などが詳細に語られますので、是非チェックしてみてください。

1番目に交際した高校のクラスメイト

「僕」が過去に交際していた女性で、もう1人印象的なのが、1番目に交際した高校のクラスメイトです。

彼女の正体は、唐突に挿入されるラジオ番組のディスクジョッキーの場面にヒントが隠されています。

ラジオ番組の中で、ビーチボーイズの楽曲をリクエストした女性がいました。彼女の要望により、「僕」宛に本番中のラジオ番組から電話がかかってきます。どうやらリクエストした女性と「僕」とは高校の同級生で、彼女からビーチボーイズのレコードを貸してもらった過去があるようです。

翌日「僕」は、4本指の女性が働くレコード屋でビーチボーイズのレコードを購入します。そして、昨夜ラジオにリクエストした女性の進学した大学に連絡をします。すると、彼女は病気の療養のため退学していました。

2度目のラジオ番組の場面では、病気の少女が姉に頼んで、手紙を番組宛てに送っている様子が描かれています。おそらく、1度目のラジオでビーチボーイズをリクエストした女性は、この病気の少女の姉であり、「僕」の高校時代の恋際相手でしょう。

病気の療養のために大学を退学したのは、妹の病気を看病するためだったと推測されます。そして、本作で「僕」の高校時代のクラスメイトは、交際していた女性か、1度目のラジオ番組にリクエストした女性しか登場しません。翌日にビーチボーイズのレコードを買って、連絡先を見つけ出そうとした「僕」の行動から見て、交際していた女性と、ラジオにリクエストした女性は同一人物と考えて問題ないでしょう。




鼠の女性問題の真実

謎を多き本作で最も気になるのは、鼠が抱えていた女性問題ですよね。

結論から説明すると、鼠が悩んでいた女性の正体は、「僕」が他方で親交を深めていた4本指の女性です。

それを決定づける描写がいくつか綴られています。まず1つ目が指の問題です。

「鼠はそれっきり口をつぐむと、カウンターに載せた手の細い指をたき火にでもあたるような具合にひっくり返しながら何度も丹念に眺めた。僕はあきらめて天井を見上げた。10本の指を順番どおりにきちんと点検してしまわないうちは次の話は始まらない。いつものことだ。」

『風の歌を聞け/村上春樹』

冒頭で既に、鼠が指の本数を気にしている場面が描かれています。

何気ない描写のため見落とした方も多いかもしれません。しかし、本作で指の本数を気にする行為は、確実に4本指の女性に関係している以外考えられません。

また、自分の指を点検する鼠は、金持ちに対する嫌悪感を露呈しています。自分自身が金持ちの息子であるにもかかわらず、金持ちを非難しているのです。おそらく、鼠は4本指の女性と交際していました。しかし、裕福な家庭であるため、鼠の両親は4本指と言う風変わりな女性との交際を認めなかったのではないでしょうか。そのため、鼠は自ら裕福な家庭に属しながら、金持ちを批判していたのでしょう。

あるいは、「僕」が鼠とバーで過ごす中で、小説についての話題が取り上げられます。

鼠はもし自分が小説を書くならという仮定で、即興で物語を話し始めます。その鼠の物語の中に「ジョン・F・ケネディ」の名前が登場します。一方で、「僕」が洗面所でぶっ倒れていた4本指の女性を家に送り届けた場面で、昨夜の記憶がない彼女は自分がどんな話をしていたかを尋ねてきます。その時に「僕」は、彼女が「ジョン・F・ケネディ」の話をしていたことを明かします。おそらく、鼠と4本指の女性と間で交わされていた名前だったからこそ、「僕」は双方から同じ名前の話題を耳にしたのでしょう。

さらには、4本指の女性から中絶の手術を受けたばかりであることを明かされます。思い返すと、「僕」と彼女が初めてジェイズ・バーで会った時、彼女は電話とトイレを行ったりきたりしていました。偶然にも「僕」はその日、鼠とは会えずに一人でビールを飲んでいます。つまり、彼女の電話の相手は鼠であり、トイレには妊娠検査薬を試しに行っていたことが推測されます。

僕は二人が交際していることを知らずに、双方と個人的に関係を深めていたのです。それが冒頭で記されていた、「認識しようと努めるもの」と「実際に認識するもの」の間に横たわる溝なのでしょう。「僕」は真実を知らないまま、これまでも多くのものを失ってきたのです。

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風の歌を聴け』は、1981年に大森一樹監督によって映画化されています。

原作に忠実な作品に仕上がっており、村上春樹の故郷である神戸の街並みが懐古的に描かれています。村上春樹のルーツを辿る意味でも、映画版を観ることをお勧めします。

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