カフカ『審判』あらすじ解説|不条理の長編三部作

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審判 ドイツ文学

カフカの小説『審判』は、『失踪者』『城』と並ぶ長編三部作のひとつです。

理由も分からず裁判にかけられた男の不条理な運命が描かれます。

本記事では、あらすじを紹介した上で、物語の内容を考察しています。

さらに映画作品の鑑賞方法も紹介します!

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作品概要

作者フランツカフカ
ドイツ
発表時期  1925年(死後に発表)  
ジャンル長編小説
ページ数378ページ
テーマ不条理

あらすじ

あらすじ

30歳の誕生日の朝、Kは理由も分からず逮捕される。だが身柄を拘束されることはなく、普段通りの生活が許されていた。

最初の審理の日、Kは聴衆の前で、自分の逮捕は不当だと主張する。だが集まった聴衆は1人残らず役人側の人間だった。

Kの訴訟を聞きつけた叔父は、Kを助けるために知人の弁護士を紹介する。弁護士はこの手の事件には優秀だと自称するが、一向に裁判は進展せず、痺れを切らしたKは、裁判官と繋がりを持つ画家の元を訪ねる。だが画家が言うには、本当の無罪を勝ち取るのは不可能で、仮の無罪か、訴訟を低い段階に留めるしか術がないのだった。

仕事の顧客を案内するために、Kは大聖堂にやって来る。そこで出会った教誨師に、法の掟についての挿話を聞かされる。それは、掟の門を潜ろうとした男が、門番に引き留められ、門の前で待ち続けたまま寿命を迎える、という物語だった。

31歳の誕生日の前夜、Kは処刑人に石切り場に連れて行かれ、心臓を突き刺される。Kは「犬のようだ!」と叫んで死ぬのだった。

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個人的考察

個人的考察-(2)

未完の章を繋ぎ合わせた作品

本作『審判』は未完の作品である。

カフカは本作を執筆するにあたり、まず冒頭の「逮捕」と、終章の「最後」を完成させた。つまり、始まりと終わりだけを先に決め、後から間の経緯を構築しようとしたのだ。だが結局完成させることができずに死んでしまった。

カフカは遺言として、原稿や草稿やメモなど全ての自作物は燃やすよう訴えていた。もし彼の遺言が守られていれば、本作『審判』が我々の目に触れることはなかった。そう、カフカの友人・ブロートが、遺言を破り出版に向けて動き出したのだ。

ブロートは、遺された各章の断片を筋が通るよう繋ぎ合わせ、1つの長編作品に再構築した。そして生前のカフカの会話に基づき、『審判』というタイトルで発表した。

いわば未完の原稿を、無理やり完成品に見せかけて発表したのだ。そのため物語の不完全さは否めない。とりわけ「大聖堂を訪れる章」「最後の処刑の章」あたりの展開は唐突である。

また、構成上使用されなかった章は、本編の後に「断章」として収録されている。日本での翻訳にあたり、「断章」も本編に挿入しようとしたが、出版元から拒否され、結局巻末に申し訳程度に収録する形になったようだ。

以上が『審判』の創作背景である。

続いて物語の考察に入る。

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『審判』に描かれる不条理

物語はKが唐突に逮捕される場面から始まる。だが問題は、Kの罪状が不明ということだ。

正確には、通告に来た監視人や監督官もKの罪状を知らず、ただ上層部の命令で動いているだけなのだ。そしてその上層部もまた、さらに上層部の命令で動いている、という無限の入れ子構造になっている。この滑稽な権力構造によって、最後までKの罪状は明かされない。

言い換えれば、Kは身に覚えのない容疑で逮捕されてしまったのだ。

この不条理こそ、カフカ文学の重要なテーマである。

例えば代表作『変身』では、主人公はある朝目覚めると、巨大な害虫に変身している。そのシュルレアリスム的な不条理と同様に、本作『審判』では、ある朝突然、Kは意味もなく逮捕されてしまうのだ。

そしてKが直面した不条理は、問題の核心に迫るほど、絶望の様相を露わにする。

①実権者が分からないカラクリ

Kは当初自らの無罪を過信し、訴訟を取り合わない。だが叔父に弁護士を紹介されたことで、解決手段を模索し始める。

それが絶望の始まりだった。

Kは潔白を証明するために、周囲の協力をあてにするが、あらゆる手段は意味を成さない。例えば弁護士は、あたかも問題解決を可能にする風を装うが、彼に任せている限り裁判が進展することはなかった。

だからと言って、自ら出頭したり、資料を集めたり、請願書を提出しても、役所の膨大な仕事の中に埋もれ、効力を持つ上層部に届くことはあり得ない。

そう、全ては実権を握る上層部に委ねれられているのだ。だが前述した通り、上層部を知る者は存在しない、という絶望的なカラクリになっている。

一度も見たことのない裁判官はいったいどこにいるのだ? 俺がついに行きつけなかった上級裁判所はどこにあるのだ?

『審判/カフカ』

無罪を証明するためには上級裁判官を突き止める必要がある。だがその存在に辿り着く道は閉ざされているのだ。

②かりそめの救済

このような絶望的な状況で、Kに許された手段は、「見せかけの無罪」と「引き延ばし」のいずれかであった。

「見せかけの無罪」とは、知り合いの裁判官に署名をもらい、Kの無罪を作為的に立証する手段である。だが署名を貰えるのはあくまで下級裁判官で、実際の判決を下す上層の裁判官には力が及ばない。そのため一時的に無罪になっても、次の日には再び逮捕される可能性がある。

次に「引き延ばし」とは、裁判官とひたすら友好関係を築くことで、裁判を低い段階に食い止め、有罪判決を免れ続ける手段である。だがこの場合、Kは永久に訴訟を抱えたままになる。

この二つの手段から分かるのは、判決の実権を握る存在が不明であるため、手近な裁判官に媚びを売って一時凌ぎをするしかないということだ。初めからKには完全な無罪を勝ち取る道は閉ざされているのだ。

出口のない訴訟に巻き込まれたKの不条理は、役所や裁判所の権力構造があまりに秩序立っているせいで、一市民であるKにはどうしても覆せない。それはまるで、人間社会の複雑なしがらみの中で、再建不能な状態に陥った絶望的状況と言い換えることができる。

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「掟の門」について

打つ手を無くしたKの物語は、唐突に大聖堂における教誨師の挿話に展開する。

実はこの挿話は、短編作品「掟の門」という、独立した作品としても発表されている。

教誨師が話した挿話は次のような内容だった。

ある男が「掟の門」を通るためにやって来た。だが門番に「今は通れない」と拒否されたため、仕方なく門の前で待つことになる。時々門番に賄賂を送ったりするが、一向に通行の許可が下りず、男は遂に門の前で寿命を迎えてしまう。

最後に男は、どうして自分以外に「掟の門」を通ろうとする者はいないのか、と尋ねる。すると門番は、ここはお前だけに開かれた門だったのだ、と言って門を閉じてしまう。

この挿話はまさに、Kが対峙した権力構造のカラクリを表している。

Kには裁判という名の門が開かれている。だが入り口には門番が立っており、「今はまだダメだ」と、あたかもいずれチャンスが訪れると言わんばかりに、Kを食い止めようとする。そこでKは言われた通り、門の前で待ち呆け、時に痺れを切らして賄賂(見せかけの無罪・引き延ばし)のような手段で、通行許可を得ようとするが、全て無意味だった。その結果、Kは死を余儀なくされた。

実はこの挿話には1つの可能性がある。門番は言葉で男を食い止めたが、別に勝手に門をくぐっても構わなかったのだ。その代わり、先に進むほどより恐ろしい門に直面すらしく、その門番の戒めに怖気付いて、男は従順に待つことを選んだのだった。

つまり、Kには自主的に門をくぐる権利が与えられていた。だが先に進むごとに強烈な権力(門)と対峙する羽目になり、その恐怖心からKは最初の門の前で絶望していたのだ。

これは決してKの消極性を非難しているわけではなく、こういった権力構造のカラクリによって、人々は突破口を失い、門をくぐれずに死んでしまう事実を訴えていたのだろう。

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現実世界の問題に置き換えて

カフカの描く不条理文学は、その不可解さによって、現実世界のあらゆる問題を暗示させる魅力がある。

つまり我々には、実際の訴訟ではなくとも、ある朝突然理由もなく逮捕されるような、不条理と直面する可能性があるということだ。それは例えば、出生や、社会的格差や、職業や、恋愛や、その他の対人関係にも当てはまる。そしてそこには、秩序という名のしがらみがあり、一度不条理に直面すれば、どう足掻いても解決不可能なのだ。

そして人間がそういった絶望的な状況に陥った時、周囲の人間は好き勝手にヒロイズムを振るう。それは作中で、弁護士や女性や画家や教誨師が、やたらとKに協力的で、自分こそ解決できるのだと、でしゃばるようにだ。だが彼らの知見は、何一つ解決に繋がらない。それどころか平気で彼らはKを見放す。

さっきはあのように親切にしてくださり、ぼくになんでも話してくださったのに、いまはぼくをただ放りだしてしまうんですか、ぼくのことなぞもうどうでもいいかのように。

『審判/カフカ』

周囲の無責任なヒロイズムによって、Kは何度も期待を裏切られることになった。

繰り返すが、これは暗示である。我々とて、Kのように周囲に期待を裏切られ、されど自分一人では不安で、ひたすら門の前に立ち尽くす瞬間があるのだから。

Kは最後に「犬のようだ!」と叫んで死んでいった。人間は圧倒的な権力、そして周囲の欺瞞の中では、犬のように死んでいく以外に術がないのかもしれない。

それは言うまでもなく、不条理だ。

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