不条理文学とは、「非合理的な出来事に本質的な意味などない」と説いた文学のことである。
例えば、カフカの『変身』のように、目覚めると巨大な虫に変身している、といったナンセンスで不気味で不条理な展開が多い。
その背後には、世界に意味を見いだそうとする人間の努力は最終的に失敗する、という哲学的な主題がある。
そして20世紀半ばに実存主義が台頭すると、再び不条理文学が注目されるようになった。
実存主義とは「存在には本質や価値はない」という考えだ。人間は自己を価値ある存在と考えているが、そもそも初めから存在に価値などないのだと・・・
諸説あるが、神の不在を説いたことで人間の生死に意味が無くなったことに端を発する。
そんな不条理文学・実存主義の特徴としては、不気味で不潔で暗い作品が多い。
本記事では、おすすめ代表作7選を紹介する。
①カフカ『変身』
発表時期 | 1915年 |
国 | ドイツ文学 |
ページ数 | 136ページ |
■作品紹介
カフカの最も有名な代表作。日本で330万部も発行される海外文学のベストセラー。個人に襲いかかる原因不明な不条理を描いた金字塔。
■あらすじ
ある朝目覚めると、男は巨大な毒虫に変身していた。家の中は大混乱に陥り、男は部屋に閉じ込められ疎外される。なぜこんな姿になったのか。理由も分からぬまま男は不条理な運命に翻弄される・・・
②カミュ『異邦人』
発表時期 | 1942年 |
国 | フランス文学 |
ページ数 | 137ページ |
■作品紹介
カミュの処女小説であり、彼の代名詞的作品。日本でも人気が高く、海外文学の歴代売上5位。人間社会の不条理と、理性の不合理を追求し、ノーベル文学賞を受賞したのはこの作品によるところが大きい。
■あらすじ
「きょう、ママンが死んだ。」
母の死の翌日に海水浴へ行き、女と情事に耽るムルソーは、あるときアラブ人を射殺し、その動機を「太陽のせい」と答える。裁判にかけられた彼は、冷酷な人間性を指摘され、死刑を宣告されるが、それでもなお彼は自分が幸福であることを確信する・・・?
③サルトル『嘔吐』
発表時期 | 1938年 |
国 | フランス文学 |
ページ数 | 373ページ |
■作品紹介
サルトルの代表作で、実存主義の聖典とされ、20世紀文学の最高傑作と称される。「全てのモノはそれ自体に価値はなく、ただ偶然に存在しているだけ」この実存主義の精神を広めた最重要作品。
■あらすじ
ある日、主人公のロカンタンは、小石を手にした時に、謎の嘔吐感に襲われる。それは実存する物体に与えられた性質、価値、言葉に対する嫌悪感だった。そして彼は性質や価値から切り離した純粋な存在と向き合うことで、不条理な精神の解放を追求するのだった・・・
④セリーヌ『夜の果てへの旅』
発表時期 | 1932年 |
国 | フランス文学 |
ページ数 | 上巻432ページ 下巻444ページ |
■作品紹介
第1次世界大戦を経験したセリーヌの半自伝的小説。戦争や植民地や資本主義への、呪詛、罵詈雑言が吐き散らかされる。あまりに過激で絶望的な内容ゆえ、東京大学出版『教養のためのブックガイド』の「読んではいけない15冊」に選出された。
■あらすじ
医学生のバルダミュは、第1次世界大戦で悲惨な体験し、戦争がいかに滑稽で無意味かを悟る。彼は愛国心で猛り狂う地獄のパリから逃げ出すものの、植民地アフリカ、資本主義社会アメリカ、行く先々でこの世界に絶望する。それは永久に逃げることの出来ない、夜の果てへの旅だった・・・
⑤ドストエフスキー『地下室の手記』
発表時期 | 1864年 |
国 | ロシア文学 |
ページ数 | 216ページ |
■作品紹介
『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』で有名なドストエフスキーが、それ以前に書いた転換期にあたる最重要作品。理性による社会改革の不可能性、人間の非合理性を主張した本作は不条理文学の先駆けとされる。
■あらすじ
主人公は20年ほど地下室に閉じこもって社会と絶縁している。彼は地下室で手記に三つの出来事を書き記す。そこには、理性によって合理化された社会、何者かになりきる馬鹿な人間、そして頭が良すぎるために何者にもなれなかった自分、そんな自虐的な社会批判が綴られる・・・
⑥阿部公房『壁』
発表時期 | 1951年 |
国 | 日本文学 |
ページ数 | 304ページ |
■作品紹介
阿部公房の初期の代表作で、芥川賞を受賞した。受賞作『Sカルマ氏の犯罪』他、6編を収録。日本における実存主義文学の第一人者で、カフカの影響をモロに受け、そしてカフカより不条理でユーモアに満ちている。
■あらすじ
ある朝突然、主人公は自分の名前を喪失したことに気づく。名前を喪失したことで彼は現実での存在権を失った。それからは不当な裁判にかけられたり、愛する女性がマネキンに変わったり、あらゆる不条理が彼に襲いかかる・・・
⑦大江健三郎『芽むしり仔撃ち』
発表時期 | 1958年 |
国 | 日本文学 |
ページ数 | 240ページ |
■作品紹介
ノーベル文学賞作家初の長編小説。初期の大江の文学テーマである「閉ざされた壁の中に生きる状態」には、不条理な社会とそれに抵抗する必要性が描かれる。サルトルに傾倒した彼の作品には実存主義の影響が垣間見える。
■あらすじ
太平洋戦争末期、山奥の村に集団疎開した感化院の少年たちは、感染症が蔓延する村に幽閉され、そこで自分達の自由の王国を建設する。だが目に見えぬ感染症の恐怖、村人達の暴力という不条理が、彼らに襲いかかるのだった・・・
まとめ
【実存主義・不条理文学おすすめ7選】
1『変身』カフカ
2『異邦人』カミュ
3『嘔吐』サルトル
4『夜の果てへの旅』セリーヌ
5『地下室の手記』ドストエフスキー
6『壁』阿部公房
7『芽むしり仔撃ち』大江健三郎
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