戦後の日本文学を代表する文豪、太宰治。
酒、女、薬物、自殺未遂など、日本文学で最もスキャンダラスな作家で、文豪三大クズの一人に挙げられることもあります。
最終的には愛人と心中を図り、38歳の若さでこの世を去りました。
そんな太宰の人生を色濃く反映させた『人間失格』は、現在でも不動の人気を誇り、他にも多くの名作を残しています。
本記事では、太宰治のおすすめ代表作10選を紹介していきます。
太宰治を読破した筆者が、厳選して紹介しています!
①『人間失格』
■歴代ベストセラー3位 半自伝的小説
発表時期 | 1948年(昭和23年) |
ジャンル | 長編小説 |
ページ数 | 192ページ |
■作品紹介
日本ベストセラー歴代3位。太宰治の代名詞とも言える半自伝的小説。本作が完成した1ヶ月後に自殺したため、実質生前最後に発表された長編小説。
■あらすじ
道化を演じる葉蔵の、幼年期から青年期までを描いた破滅的な物語。父親との確執、女性問題、思想の敗北、アルコール・ドラッグ依存、自殺未遂、その果てに待ち受ける人間失格。人を信じれなくなった道化はどこまでも堕ちていく・・・。
②『斜陽』
■社会現象となった大ヒット小説
発表時期 | 1947年(昭和22年) |
ジャンル | 長編小説 |
ページ数 | 256ページ |
■作品紹介
『人間失格』と並ぶ代表作。発行当初からベストセラーを記録。「斜陽族」という言葉が流行語となり、国語辞典に掲載されるほどの社会現象を巻き起こした。
■あらすじ
戦後の華族制度廃止で没落貴族となった姉弟の生き様を描いた物語。移りゆく価値観の中で、それぞれが禁断の恋に落ち、悩み苦しむ姉弟。新しい価値観の中で強く生きていくか、かつての貴族としての価値観の中で死んでいくか。時代の過渡期、若者は苦渋の選択を迫られる・・・。
③『女生徒』
■川端康成が絶賛した太宰の出世作
発表時期 | 1939年(昭和14年) |
ジャンル | 中編小説 |
ページ数 | 64ページ |
■作品紹介
女性ファンから送られてきた日記を元に創作された小説。芥川賞の選考で一悶着あった川端康成が絶賛した、太宰の出世作。
■あらすじ
思春期の少女の鬱々とした意識の流れが描かれる。ずっとお人形さんのようにありたい、だけど自分の意思とは裏腹に肉体は成長していく。大人になってから思い返せば何でもない思春期の苦痛が、少女目線で繊細かつ生々しく語られる。
④『富嶽百景』
■御坂峠の旅館に滞在する太宰の復活劇
発表時期 | 1939年(昭和14年) |
ジャンル | 短編小説 |
ページ数 | 17ページ |
■作品紹介
妻の不貞により四度目の自殺を図った太宰が、心機一転、執筆に集中するために御坂峠に滞在した期間の実録的小説。教科書にも掲載される名作。
■あらすじ
思いを新たに旅に出た主人公は、甲州御坂峠の旅館「天下茶屋」に滞在する。暗い出来事を背負い精神的に落ち込んでいた時期から、三ヶ月間の滞在を経て、徐々に回復に向かう主人公の心情の変化が、富士山の景観と重ね合わせて描かれる。
⑤『正義と微笑』
■数少ない希望に満ちた青春小説
発表時期 | 1942年(昭和17年) |
ジャンル | 中編小説 |
ページ数 | 179ページ |
収録 | 作品集『パンドラの匣』 |
■作品紹介
表題作『パンドラの匣』と併録される、数少ない希望的な青春小説。この作品を最後に、太宰は二度と希望的な小説を書かなくなる。
■あらすじ
17歳の芹川進が、演劇の世界に飛び込むまでの若き葛藤の物語。世間に不満を抱き、ロマンチシズムに憧れた思春期の少年は、成長と共にリアリストになっていく・・・
⑥『駆け込み訴え』
■ユダの裏切りをメンヘラに描く
発表時期 | 1940年(昭和15年) |
ジャンル | 短編小説 |
ページ数 | 17ページ |
収録 | 作品集『走れメロス』 |
■作品紹介
キリストを裏切ったユダを主人公にしたパロディ作品。ユダのキリストに対するメンヘラさながらの独白が為される。
■あらすじ
「あの人を殺して私も死ぬ」「自分の手であの人を殺してあげたい」「あの人は私に殺されたがっている」
最後の晩餐で企てられたユダの裏切りは、キリストを深く愛し過ぎていたゆえの憎悪が原因だった・・・?
⑦『きりぎりす』
■成功は人を醜くしてしまう?
発表時期 | 1940年(昭和15年) |
ジャンル | 短編小説 |
ページ数 | 19ページ |
■作品紹介
『斜陽』『ヴィヨンの妻』などの作品でも発揮される、女性1人称の傑作。
■あらすじ
しがない芸術家だった夫が、成功した途端に高慢ちきになり、それを見兼ねて妻が別れを切り出す物語。人の世で器用に生きる夫に共感できない、妻の純真な心が独白形式で語られる。果たして人間の品格とは・・・?
⑧『ヴィヨンの妻』
■太宰を支えた女性たちの物語
発表時期 | 1947年(昭和22年) |
ジャンル | 中編小説 |
ページ数 | 34ページ |
■作品紹介
芸術家の妻の目線で描かれる女性1人称の傑作。破滅的な芸術家を支える女性たちは、太宰の生涯を彷彿とさせる。
■あらすじ
放蕩癖のある芸術家の夫が料理屋で窃盗を図ったことで、妻は詫びとしてその料理屋で働くようになる。世間を知らなかった妻は、社会に出て初めて酸いも甘いも噛みも知る。「女はリアリスト、男は夢想家」戦後の日本人女性の生命力が描かれる。
⑨『道化の華』
■『人間失格』の主人公・葉蔵のスピンオフ
発表時期 | 1935年(昭和10年) |
ジャンル | 短編小説 |
ページ数 | 60ページ |
収録 | 作品集『晩年』 |
■作品紹介
『人間失格』でお馴染み、葉蔵を主人公にしたスピンオフ的作品。5回の自殺経験がある太宰治の、2回目の自殺がモチーフ。初の作品集『晩年』に収録。
■あらすじ
女性と入水自殺を決行し、自分だけが助かった葉蔵の入院生活が描かれる。友人たちや実の兄の訪問を受け、鬱屈とした雰囲気に飲み込まれないように、わざと平穏を装っている葉蔵の心情が生々しく描かれる・・・
⑩『桜桃』
■遺作、最後の短編小説
発表時期 | 1948年(昭和23年) |
ジャンル | 短編小説 |
ページ数 | 11ページ |
■作品紹介
長編の遺作が『人間失格』なら、短編の遺作は『桜桃』。太宰の好物ということもあり、命日6月19日は「桜桃忌」と呼ばれている。
■あらすじ
「子供より親が大事」という印象的な一文で始まる本作には、太宰が実際に抱えていた家庭の問題が描かれている。長男がダウン症であること、それにまつわる夫婦間の張り詰めた雰囲気。精神的に弱く、すぐに家庭から逃げ出してしまう太宰の心情が、桜桃というキーワードを用いて表現される。
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