中島敦おすすめ代表作品10選 全集や短編集から紹介!

中島敦おすすめ おすすめ作品
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言わずと知れた昭和初期の小説家、中島敦

実は彼は生まれながらに病弱で、その短命な生涯において20数作品余りしか遺していません。

今回は全作品を読破した筆者が厳選した、おすすめの小説10作品を紹介します!

①『山月記』

教科書掲載鉄板!虎になった男の話

■作品紹介
中島敦の代名詞といえば『山月記』です。
高校現代文の教科書に掲載されているため、誰しも一度は触れたことがあると思います。

エリート官僚で自尊心の強い李徴が、詩人を志すも上手くいかず、官僚に出戻りして、かつての同僚や部下に仕える立場に。その屈辱に耐えられず発狂して疾走した彼は、なんと虎に変身していた・・・。
臆病な自尊心を飼い慣らした結果、何をも成し遂げずに破滅していく惨めな人間の姿が描かれています。

人生は何事をも為さぬには余りに長いが、何事かを為すには余りに短い

『山月記/中島敦』

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②『文字禍』

「文字の霊」が人間に災いをもたらす!?

■作品紹介
文字禍』は、代表作『山月記』と一緒に雑誌掲載された実質のデビュー作になります。

メソポタミア文明でお馴染み、チグリス・ユーフラテス川上流に位置した、アッシリア帝国が舞台の物語です。夜の図書館から聞こえる「文字の霊」の話し声。老博士が研究を進めるうちに、文字の霊は人間に災いをもたらす力があると判明します。本来、人間が操るはずの文字。いつしか人間が文字に操られるようになっている・・・。

文字情報以外の事実は存在しないとされる、浅薄な合理主義に警笛を鳴らす寓話です。

歴史とは、昔、在った事柄ことがらをいうのであろうか? それとも、粘土板の文字をいうのであろうか?

『文字禍/中島敦』




③『牛人』

サイコホラー要素の強い奇妙な物語・・・

■作品紹介
牛人』は、中国古典「春秋左氏伝」を基に創作された作品です。

ある夜、自室の天井が迫ってくる夢を見た主人公。近くにいた牛に似た男が、落ちてくる天井を支えて助けてくれました。それから数年後、かつて一夜を共にした女性が、その時に出来た子供を連れて訪ねてきます。なんと、その子供の顔は、例の夢の牛人にそっくりでした・・・。
本妻の息子と、愛人の息子、後継問題で小競り合いが生じ、牛人の息子の恐ろしい正体が露わになる・・・?

己を殺そうとする一人の男に対する恐怖ではない。むしろ、世界のきびしい悪意といったようなものへの、へりくだったおそれに近い。

『牛人/中島敦』

④『悟浄出世』

■『バケモノの子』の題材になった作品

■作品紹介
悟浄出世』は、西遊記の登場人である沙悟浄(カッパ)が、三蔵法師一行と出会うまでの期間を描いた物語です。

あらゆる物事に「なぜ?」と考えずにはいられない沙悟浄は、「自分とは何か?」という疑問に苦しんでいます。彼は多くの賢人の元を訪ね、教えを説いて貰います。虚無主義、行動の重要性、快楽主義。あらゆる思想に触れた悟浄は、かえって何を信じればいいのか分からなくなります。そんな悟浄は夢の中で観音菩薩のお告げを聞き、三蔵法師一行の旅に加わることにするのでした・・・。

古典的な物語に、中島敦らしい思弁家の苦悩を組み合わせた作品です。

それでもまだお前は、傍観者の地位に恋々として離れられないのか。物凄い生の渦巻の中で喘いでいる連中が、案外、はたで見るほど不幸ではない(少なくとも懐疑的な傍観者より何倍もしあわせだ)ということを、愚かな悟浄よ、お前は知らないのか。

『悟浄出世/中島敦』




⑤『悟浄歎異 ―沙門悟浄の手記―』

『悟浄出世』の続編!三蔵法師との旅

■作品紹介
悟浄歎異―沙門悟浄の手記―』は、旅の一行に加わった悟浄が、冷静な目で孫悟空、三蔵法師、猪八戒を分析する物語です。

悟浄は、悟空を真の天才と認めています。生命力溢れ、過去の出来事に囚われず、因襲や世間的名声にも屈しない生き方を尊敬しているのです。三蔵法師に対しては、内に秘めた尊さ、正しく美しいものを求める崇高さに、魅了を感じています。怠け者の猪八戒でさえ、来世の極楽よりも現世を愛し執着する生き方は、悟浄には尊敬に値するのでした。一行に加わり3人の異なる魅力に接触する中で、悟浄はかつての苦悩を掻っ払うような熱意を見出していく・・・。

自由な行為とは、どうしてもそれをせずにはいられないものが内に熟してきて、おのずと外に現われる行為のいいだ。

『悟浄歎異 ―沙門悟浄の手記―/中島敦』

⑥『かめれおん日記』

教員時代の作者の苦悩が綴られた日記

■作品紹介
かめれおん日記』は、作者の教員時代の日常が描かれた作品です。

生徒から貰ったカメレオンを飼育することになった主人公。彼は精神的な蟠りを抱えており、その最もたる原因は、身を打ち込める仕事を持っていないことでした。習慣や環境に支配されて失われる自我、その絶望的な境遇で、それでも捨てきれないない自意識に辟易しています。

小説家として日の目を見ず、やりたくもない教員を勤めていた当時の中島敦の葛藤が読み取れます。

俺といふものは、俺が考へてゐる程、俺ではない。俺の代りに習慣や環境やが行動してゐるのだ。之に、遺傳とか、人類といふ生物の一般的習性とかいふことを考へると、俺といふ特殊なものはなくなつて了ひさうだ。

『かめれおん日記/中島敦』




⑦『光と風と夢』

芥川賞候補になった唯一の中編小説

■作品紹介
光と風と夢』は、『ジキルとハイド』で有名な英国の作家スティーヴンソンを主人公にした伝記小説です。芥川賞候補にも選出されました。(受賞は逃しましたが)

主人公スティーヴンソンは療養のため、南国のサモア諸島に移住します。サモアは白人の植民地でしたが、スティーヴンソンは原住民と友好的に交流します。島内の政治問題についても、彼は先住民のために尽力します。その傍らで、スティーヴンソンの、作家として苦悩する心情も同時に語られます。

生涯をサモアで終えた天才作家の、長閑でありながら、怒涛でもある人生が、伝記的に描かれています。

昔、私は、自分のした事にいて後悔したことはなかった。しなかった事に就いてのみ、何時も後悔を感じていた

『光と風と夢』

⑧『名人伝』

■生前最後の遺作

■作品紹介
名人伝』は、生前最後に発表された作品です。中島作品の中で、とりわけ寓話性が強く、皮肉か効いた主題も異色です。

天下第一の弓の名人を志す紀昌は、師匠に従事して修行に励んだ結果、もはや師さえも超える勢いでした。それでも向上心が止まない紀昌が次に従事したのは、弓を使わずに鳥を射る仙人でした。この仙人の元での修行を終えた紀昌は、「弓をとらない弓の名人」という超人の領域に達していたのでした・・・。

果たして「弓をとらない弓の名人」は本当の名人なのか?

古今無双ここんむそうの射の名人たる夫子が、弓を忘れ果てられたとや? ああ、弓という名も、その使いみちも!

『名人伝/中島敦』




⑨『弟子』

孔子と弟子の奇妙な関係を描いた物語

■作品紹介
弟子』は、主人公の子路が、儒教の開祖・孔子の門弟となってから、衛の政変で死ぬまでの物語です。

荒くれ者の子路は、賢人を辱めてやるつもりで孔子を尋ねたのですが、すぐに彼の偉大さに気づき弟子入りします。師弟一行が中国各地を渡り歩く旅中、子路は何度も孔子に問答を仕掛けます。子路は最も手のかかる弟子なので、孔子の思想に食ってかかっては諭され、人生についての教養を高めていきます。やがて貫禄が出た子路は、一つの街を治めるまでに成長していくのでした・・・。

悪は一時栄えても結局はその報いを受けると人は云う。しかし、善人が究極の勝利を得たなどという例はほとんど聞いたことさえ無い。何故だ?天は何を見ているのだ。そのような運命を作り上げるのが天なら、自分は天に反抗しないではいられない。

『弟子/中島敦』

⑩『李陵』

漫画『キングダム』の子孫の代を描いた物語

■作品紹介
李陵』は、作者の死後に発表された最後の遺作です。前漢の時代の将軍の人生を描いた物語です。漫画「キングダム」の主人公・李信の子孫にあたる、李陵が主人公です。

3万を超える敵の遊牧民族に対して、勇敢に立ち向かった李陵は、敵国の捕虜になってしまいます。時期を見計らい脱走を計画していました。しかし、その醜い自尊心のために、自国を裏切る羽目になる悲劇が描かれています。同時に、不条理の中で自らの執念を貫く司馬遷や蘇武といった、李陵とは対照的な人間の生き様も描かれるため、より李陵の惨めさが増すのでした・・・。

農民から大将軍に成り上がった李信の子孫が、こんな末路を歩んだと思うと胸が痛みます。

誰にもみとられずに独り死んでいくに違いないその最後の日に、自ら顧みて最後まで運命を笑殺しえたことに満足して死んでいこうというのだ。誰一人己が事蹟を知ってくれなくともさしつかえないというのである。

『李陵/中島敦』

中島敦の色男エピソード

小説の主題や、あるいは顔写真、どれをとっても、博識で堅実な印象がある中島敦。

しかし、実は肉食系の色男だった・・・?

下の記事では、あまり知られていない中島敦の逸話を紹介しています。

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